非正規公務員の問題とは?正規でないことにメリットはあるか

非正規の公務員は今増えていますが、公務員というと安定した仕事の代名詞とは大きく違い、厳しい環境下で働いている人も多いです。就職のための選択肢として非正規の公務員を考えている人は、しっかり状況を理解して選ぶことが大切です。

非正規公務員の問題とは?正規でないことにメリットはあるか

増える非正規公務員への就職をどう考えるか

公務員といえば安定した職業の代表として紹介されることが多いですが、その公務員の中でも今は非正規雇用の公務員が増えています。

正規の公務員であれば一般的なイメージと同様に安定した給与や労働環境が与えられますが、非正規の場合は必ずしもそうとは言えず、世間的な公務員のイメージからは大きく違いがあります。

就職に際して公務員を考える人も多いと思いますが、非正規公務員への就職も視野に入れるべきかどうか、まずは基本的な状況を理解した上で考えてみるのが良いでしょう。

非正規の公務員とは

非正規の公務員とは、正規の公務員採用試験を受けずに公務員となった人を意味します。臨時職員、非常勤職員などの区分があります。

総務省の発表によると、平成28年4月の時点で、地方自治体における非正規の職員の数は約64万人となっており、4年前の調査結果と比較して4万5千人ほど増えています。

組織ごとに見ると、都道府県で約14万人、指定都市で約6万人、市区約36万人、町村約7万人となっており、どの行政単位においても増えていることがわかります。地域によっては、正規の公務員と非正規の公務員の割合がほぼ1:1になるところもあります。

また、職種別で見ても事務補助職員約10万人、教員・講師で約9万人、保育所保育士約6万人、給食調理員約4万人、図書館職員約2万人となっています。性別では臨時・非常勤職員の74.8%を女性が占めている状況です。

現在、非正規の公務員の数は正規公務員の半数に近い割合であり、労働時間が非常に短いアルバイトのような立場の人を含めるとそれ以上になると考えられます。

4人の正規公務員と4人の非正規公務員。非正規公務員のうち女性が3人、男性が1人

非正規の公務員が増えた背景

非正規の公務員が増加した背景は、地方自治体に求められる仕事が増えたこと、そして「小さな政府」を目指して、できるだけ公務員の人件費を削減しようとする動きが強いことです。行政サービスを受ける側としては低い税金で多くの高品質のサービスを受けられるのは良いことですが、サービスを提供する側はそうは言っていられません。

実際、正規の公務員の数は減ってきており、その一方で非正規の公務員が増えています。非正規の公務員は、賃金が正規職員よりも安いということもありますが、支出項目上は「人件費」ではなく「物件費」となり、人件費にカウントされないのです。

提供するサービスは減らせないものの、数字は良く見せないといけないというジレンマから、非正規の公務員が増加するようになっており、この傾向は全国で見られています。

非正規公務員が増えることに関する問題

非正規公務員が増えることで、様々な問題が生じています。どんな問題があるのか、4つの問題について見ていきましょう。

非正規公務員の増加にともなう問題「身分の保証・待遇の問題」「雇い止めの問題」「正規・非正規の仕事内容の逆転現象」「非正規社員と非正規職員の格差問題」

身分の保証・待遇の問題

非正規社員が正規社員よりも立場が弱いように、非正規の公務員は正規の公務員よりも立場が弱く、また待遇も悪くなっています。具体的には、昇給は行われず、平均賃金は正規公務員平均の約3分の1程度であること、また契約の更新が必要なこと、社会保険の種類の違い、賞与がない(平成32年より支給される予定)ことなどが挙げられます。

雇い止めの問題

非正規で働いている場合には、常に雇用主が継続雇用を断ることができる「雇い止め」の問題がつきまといます。そのため、身分が安定しない他、職場でのトラブルを恐れ、主体的な仕事が難しくなるなどの問題が生じています。

正規・非正規の仕事内容の逆転現象

公務員法では、非正規の職員の仕事内容は「正規職員の補助ないしは一時的な仕事」と位置付けられています。しかし、これが名目だけのものとなっていたり、逆転現象が生じていたりします。非正規の職員が新しく入ってきた正規職員を教育するケースや、待遇上の違いがないにも拘らず非正規職員が特定の職務の責任者に指名されるケースが生じています。

非正規社員と非正規職員の格差問題

新聞やニュースで非正規社員に関する格差改善についての情報が飛び交いますが、多くは非正規「社員」に関するもので非正規の公務員は含まれていません。裁判でも、同じような仕事をしていた場合に、非正規社員に関する判例では格差是正が指示されていても、公務員では認められていません。そのため、同じ「非正規」でありながらも、格差が生じ、拡大していく可能性が指摘されています。

非正規公務員にメリットがないわけではない

非正規公務員には厳しい話が多いですが、非正規公務員でいることにメリットがないということではありません。

非正規公務員のメリット「労働時間・休日が安定している」「社会に貢献していることが実感できる」「非正規の公務員として再契約がしやすい職種もある」「有給が使いやすい」

労働時間・休日が安定している

非正規の公務員での最大のメリットは、労働時間や休日が比較的安定していることで、どうしてもという事情で生じた残業や休日出勤があれば手当が出たり、代休が取れたりすることです。そのため、プライベートでのスケジュールが立てやすいというメリットがあります。

社会に貢献していることが実感できる

非正規の公務員だとしても、一般の公務員と同様に地域に根差したサービスを行い、地域住民と直接触れ合いながら地域社会に貢献することができます。責任ある仕事が任されることが多いことは、人によってはやりがいを感じられるということでもあります。

非正規の公務員として再契約がしやすい職種もある

臨時や非常勤といった非正規の公務員は、更新をする必要があります。しかし、同じような地域・職種であれば、働きぶりが内外から評価されている場合は、その実力を買われて就職しやすくなるケースもあります。どうしても勤め先は転々とするものですが、非正規ながらも正規職員以上に地域の各所で知られている人もいます。

人手不足が常に話題となっている保育士や保健師などは特にこうした傾向が強く、待遇が上がることを求めないなら仕事は安定するのは民間の仕事と比べた場合、メリットと言えなくはありません。

有給が使いやすい

有給を使うためには職場の雰囲気も大切ですが、比較的有給休暇が使いやすい雰囲気が職場にあることが多く、また非正規の職員に対しては正規の職員も積極的に有給の取得を勧める傾向があります。

非正規公務員を目指すにはどうしたら良いのか

非正規公務員を目指すには、各自治体が出している求人に応募するのが一般的です。筆記試験や面接を行った結果、合格不合格を判定することになります。選挙などで公務員職となる場合も正規の公務員職ではないため、非正規公務員(特別職)扱いとなります。求人が出ているほど切羽詰まった事情もあるため、正規の公務員採用試験と比べると合格率も各段に高まります。

非正規公務員から正規の公務員になれるのか

非正規公務員と正規の公務員の最大の違いは、「公務員採用試験を突破したかどうか」です。

そのため、非正規公務員から正規の公務員になろうと思った場合、どうしても公務員採用試験に合格する必要があります。非正規公務員をしていたことが正規の公務員になる上で有利になるかと言えば、面接では過去の働きぶりによって多少評価に影響する可能性があるものの、ほとんど違いはありません。

正規公務員になるには公務員採用試験合格が必要

民間企業では非正規社員から正規社員への雇用契約の変更がある場合もありますが、公務員においてはこうした制度は現状では整備されていないため、できない状況となっています。ただし、正規の公務員を目指して勉強している人が非正規の公務員として働いているケースも若い人では少なくありません。

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非正規の公務員に関する展望

非正規の公務員の数は、公務員として認識される人数全体の3分の1以上となりつつあり、今後もこの傾向は変わらないと見られています。日本国内の景気や行政組織の業務範囲・財政状態を考えみても、人件費を増やすことが難しい事情は続くと予想されます。

ただ、非正規社員の問題に比べて進行のスピードが速いことや、社会問題としてクローズアップされてきていることもあり、状況は少しずつ改善に向かうものと考えられます。給与や待遇、契約条件などの改善や、正規職員への登用などの条件などの改善についての議論は始まっています。

行政組織や公務員を取り巻く問題は、政府や国会での決定に大きな影響を受けますので、政治や法律に関するニュースなどに注意を払っておくことが肝心です。

非正規の公務員はよく考えてから選ぶべき

正規公務員を目指す人のイメージ

公務員というと安定した職業だと考えられがちですが、今増えている非正規の公務員を取り巻く状況は、民間以上に厳しい部分があることは理解しておく必要があります。

それでも、ライフスタイルに合っている、職場が近くてプライベートの予定が立てやすいなどメリットを感じられるようなら、就職先として検討することも決して悪くありません。

今後、非正規の公務員を取り巻く状況は変わっていくことが予想されますので、今は興味がないという人も、関連する情報にはアンテナを張っておくのが良いでしょう。