「在中」の意味・正しい書き方・書類を受け取る相手に示す心配り

「在中」の意味が分かると、書類や手紙の封筒に書かれている外脇付から、その書類の扱い方などがわかります。特にビジネスシーンでは「在中」と書類の内容を示すことでビジネスを円滑に進めることができ、かつ相手への心配りを示せるなどメリットが多いです。

「在中」の意味・正しい書き方・書類を受け取る相手に示す心配り

「在中」は書類送付時に必要なマナー

今ではメールによる書類のやり取りも多くなりましたが、書面で文書などを送る場合には郵送に関してもビジネスマナーがあります。「応募書類在中」「請求書在中」などの「在中」もそのひとつです。

若い人の中では、自分で書類を送ったことがなく、郵送に関するマナーがわからない人も増えています。そこで、基本中の基本とも言える「在中」の意味や書類送付に関するマナーについて確認しましょう。

「在中」の意味と書く目的

「在中」は「ざいちゅう」と読み、字の通り「中に在る(入っている)」という意味です。書類を入れる封筒に、どんな書類が入っているかを開封しなくても知らせるため「○○在中」と書きます。

電子メールでも、届いていることはわかっていても開封せずに置いておくことがありますが、紙の書類についても同様のことがあります。請求書や注文書などは、受け取り側がしっかり確認して納期内に処理してくれないとビジネス上大変なことになります。

また、大事な契約書類などは、破損したり汚したりしてしまわないよう、丁寧に扱ってもらう必要があります。書類の中身がわからないと、扱い方にも差が出てしまうのです。そのため、受け取り側が確実に事務処理をしてくれるように、封筒の外側の見えるところに「○○在中」と書いておくのです。「在中」のように手紙や文書・添付書類についての情報を封筒に書き示すための語を「外脇付(そとわきづけ)」と言います。

在中が書かれた封筒に外脇付けの文字

封筒に「在中」と書く時のマナー

「在中」の意味がわかったところで、どんな場合に封筒に「在中」と書くのかを含め、「在中」と書く時のマナーについて確認しましょう。封筒に「在中」と書く時のポイントはいくつかあります。ビジネスシーンで書類を郵送する際の参考にしてください。

「在中」は大切な書類を送る場合に書くのが基本

「在中」を封筒に明記するのは、様々な応募書類や、履歴書や見積書、請求書、注文書、確定申告書など大切な書類を送る場合に書くのが基本です。たとえば「履歴書在中」「重要書類在中」「見積書在中」「領収書在中」「確定申告書在中」というように書きます。

どの書類が大切かという判断は、各自行うことになりますので企業や個人によって差があります。表記のポイントとしては、ひと目見て同封されている書類の内容がわかることを大切にしましょう。

「○○在中」の文字は赤、青、黒が無難

ビジネスシーンの場合、「在中」の文字色は基本的に赤や青、黒を使っておくのが無難です。お金に関する書類では、赤い字が「赤字」を連想させるため、避けた方が良いとされています。

「○○在中」と封筒に記載する場合、使う色には特に決まりはないものの、記載する目的が「封筒の中身を知ってもらい、他のものと区別してもらうこと」ですので、「在中」の文字色や文字の大きさなどは多少目を引くように工夫しておくのが良いでしょう。他の文字と調和して、「在中」の文字が目立たなければ意味がありません。また、できれば油性ペンなど、滲んだり消えたりしにくいものを使うのが望ましいです。

「在中」は添字なので小さめに書く

「在中」の文字の大きさは、他の情報よりも小さく書くのが基本です。本来、外脇付けは添字のようなものですので、宛先や住所、差出人の名前よりも大きく書かれるべきではありません。ただし、最近は封筒も宛先や住所、差出人の名前などを印刷で処理していることも多いため、その際は「在中」の文字サイズをさほど気にする必要はありません。

「在中」は線で囲んで目立たせる

視認性を高めるために、「○○在中」の部分は線で囲むのが基本です。添字ではあるものの、目的を考えると目立たせる必要があるためです。線の色にも決まりはありませんが、文字色と揃えるようにします。大事な書類を扱っていますので、できれば定規をあてて、やむを得ずフリーハンドの場合もなるべく丁寧に線を引きましょう。

「在中」の位置は縦書き封筒なら左下、横書き封筒なら右下

在中を記載する位置は封筒の表側の左下が基本と示す図

「在中」と記載するのは、封筒の表側が基本です。さらに、位置については封筒を「縦書き」「横書き」のどちらで使っているかをもとに判断します。縦書きの場合には封筒の左下、横書きの場合は右下になります。

基本的に「在中」の文字は宛先や宛名など必要な情報を記載して、その文末にあたる部分に記載するものだと思っておくと良いでしょう。書くスペースがない場合は、全体のデザインや文字の位置などを考慮して邪魔にならない場所に書いておけば大丈夫です。

「在中」は印刷・スタンプによる記載も可

「○○在中」については、手書きされることが多いですが、必ずしも手書きである必要はありません。宛先などと一緒に印刷して貼り付けても良いですし、「重要書類在中」「見積書類在中」など用途別スタンプを作っても良いでしょう。そうすれば時短できますし、記載ミスも少なくなりますので、多くの書類を作成・処理する必要がある人などには便利です。

封筒に印刷された推薦状在中の文字

封筒に「在中」と書くことのメリットは?

ここで、「在中」と封筒にわざわざ書くことには、どんなメリットがあるのでしょうか。考えられるメリットをいくつか見てみましょう。

書類を受け取る側の事務処理を助ける

「在中」のような外脇付を使用する最大のメリットは、書類を受け取る側の事務処理を円滑にできることです。たとえば履歴書を送った時に、「○○株式会社 人事担当者様」のような宛名で送られていた場合には、受け取り側の社内では次にように書類が回ります。

人事部に封筒のまま渡される→人事部の人が開封して書類の中身を確認する→採用担当の人に回す

しかし、「応募書類(履歴書)在中」とあれば、受け取った時から「ああ、採用担当の人だな」とすぐにわかりますので、人事部に渡す手間が省け、すぐ採用担当者に届くのです。

担当者が不在でも対応が可能になる

「○○在中」と書いて、封筒に入っている書類の内容を示すことによって、それを受け取る相手側に必要なアクションを促し、タイムリーな処理を可能にすることができます。

たとえば、請求書であれば、会社ごとに締め日が決まっているため、社内の処理に間に合うように処理してもらう必要があります。しかし、締め日ギリギリに届き、担当者が不在だったり、開封を忘れていたりした場合には正しく処理が行われず、請求元の会社にも支払う側の会社にも迷惑がかかります。

ですが「請求書在中」と書いてあれば、たとえ担当者が不在だとしても、封筒を受け取った人(総務など)が担当者に電話で確認を取ったうえで開封し、処理に回すなどの対応ができるようになります。

封筒を手渡しされた時にも簡単に他の書類と区別しやすくなる

「在中」などの外脇付は郵送の際のマナーではありますが、手渡しで書類を渡す時にも使えます。履歴書などを面接時に企業側に手渡すことになる場合、企業側は履歴書の他にも書類を受け取るかもしれませんし、他の応募者の履歴書なども一緒に保管することもあります。

企業側は様々な人から、多くの書類を受け取ります。その中で履歴書の入った封筒をすぐに探し、区別しやすくするためにも、「履歴書在中」と外脇付を入れておきましょう。

中の書類を破かないよう慎重に開封してもらえる

ビジネス書類の中には、契約書のように長期間保管しておかなければならないものもあります。もしも開封時に中の書類を破損してしまったりすると、程度によっては問題となってしまうこともあります。「○○在中」と封筒に書いておくことで、中の書類を破いたり、傷つけたりしないよう慎重に開封してもらうことができます。

礼儀正しい印象を与えることができる

最近は昔と比べると、様々な書類が電子化されて回っているため、紙の書類そのものが減っています。そのため、一昔前と比較して「在中」などを書く必要性は薄れてきています。

しかし、その分、書類を郵送する際にしっかりと「在中」と書いてくれる人は礼儀正しい人であり、書類を受け取るにも気を遣ってくれている人だという印象を与えることができます。書類を必要としている相手側の担当者本人だけでなく、総務や部内の事務の人など、郵便物を扱うすべての人に良い印象を与えられるでしょう。

「在中」を書くことでのリスクはそれほど大きくない

最近は情報の取扱いにも注意が必要ですが、封筒にわざわざ「重要書類在中」「見積書在中」などと書くことにリスクはないのでしょうか。危険がまったく無いとは言い切れませんが、慣習的に行われていることでもあり、「在中」と書くことで特に危険が増すとも言えません。盗難などのリスクが高い現金や有価証券は普通郵便や宅急便では郵送できませんが、書類はさほどリスクが大きくはないと考えられています。

万が一「○○在中」と書かれた封筒を落としてしまったり、封筒が入ったカバンごと紛失してしまったりした場合、顧客や会社に関する情報が第三者に知られてしまうことは起こり得ます。そういう点では、確かにリスクのあることだと言えるでしょう。情報漏えいなどのリスクが気になる場合は、外脇付を記載しない、もしくは自分で相手に直接渡すようにするなどの対策を講じましょう。

しかし、一方で封筒を見ただけで内容物に関することがわかれば、仮に封筒の表にその郵便物の送り主や送り先などの情報がなかったとしても、警察などで書類から持ち主を調べて連絡することも可能です。

「在中」は英語でENCLOSED:書類を海外に郵送する場合

取引先の企業が必ずしも国内の企業とは限りません。その場合、エアメールで書類を送ることもあるでしょう。エアメールだとしても、重要な書類を送付するときにはその旨を封筒に記載する必要があります。

たとえば「請求書在中」という意を示したい場合は、英語で”INVOICE ENCLOSED”と表記します。”INVOICE”が「請求書」、”ENCLOSED”は「添付、在中」という意味です。書類の種類や内容物によって、”INVOICE”の部分を変えましょう。

英語での請求書在中は「invoice enclosed」

書く位置は、送り先の住所の下などに書くのが一般的です。書き方のルールなどは特に指定があるわけではないため、日本で「在中」を使う場合と同じように考えて記載しておけば問題ありません。この部分の書き方に不備があるからと送り返されるようなことはまずありません。書き方でもし不安があれば、会社の上司や先輩などに確認してみると良いでしょう。

「在中」以外の外脇付の種類

「在中」の他にも、外脇付にはいくつかの種類がありますので、合わせて覚えておくと良いでしょう。以下で紹介する外脇付の本的な書き方は「在中」と同じです。

親展(しんてん)

「親展」は比較的見かける機会も多いですが、これは「本人が開封して閲覧してください」という意味を示す外脇付です。重要な書類や、個人情報を扱った書類でよく見られます。

至急

「至急」はその文字が示す通り、「急いで開封し、対応してください」という意味です。「急信」という外脇付もありますが、これも同様の意味を持ちます。「至急」は催促する手紙や文書でよく利用され、対応しない場合には不利益が生じる場合もあります。

重要

「重要」は文字通り重要な書類であることを示すもので、「丁寧に扱ってください」という意味を持ちます。「重要」と書かれた封筒に入っている書類は失くさないことはもちろん、劣化や改ざんが起こらないよう大事に保管します。

拝答(はいとう)

「拝答」はあまり多くは見ない表現ですが、「返信してください」という意味を持ちます。「待貴答」や「乞返答」なども同じ意味です。結婚式への参加確認など、返事が欲しい内容でよく使われ、一緒に返信用のハガキや封筒がついていることも多いです。

「在中」に似た言葉に注意しよう

意味や音の点で、ここまで紹介してきた「在中」と似ている言葉がいくつかあります。ビジネスシーンでの会話などの中で混同しないようにしておきましょう。

在中

「在中(ざいちゅう)」は、音も表記も同じでややこしいですが、「中国(台湾を含む)在住」という意味で使うことがあります。「在中日本人」などが正しい使い方ですが、「在中です」などと使う人もいるので注意しましょう。ちなみに、中国語で「在中」は英語の「in」にあたり、「~(場所)で」という意味になります。

在籍

在籍は「所属している、籍がある」という意味です。「○○さんはいらっしゃいますか?」と電話などがあった場合に、「○○は在中しています」「○○は在籍しています」などと答えないように注意しましょう。「在籍」は現在の在、不在を表す表現ではありません。

「○○さんはこちらにお勤めでしょうか?」などの質問なら、「○○は在籍しています」が適当です。「在中」は人間に対しては使いませんので、気をつけてください。

駐在

「駐在」は在籍と意味が近いですが「派遣されて留まっている」という意味を持ちます。基本的には仕事上の都合などで、本来の住所とは別のところに一定の期間とどまっている状況を指します。「昨年の秋から香港駐在中」など、「駐在中」という表現を耳にすることもありますが、文書を扱う際の「在中」とは関係がありません。

「在中」を封筒に書くことの意味は書類の中身を示すため

「重要書類在中」のように封筒で「在中」を記載する意味は、書類の内容を示すことによって、受け取り側での書類の扱いや処理を円滑にするためです。「在中」のような外脇付の正しい書き方を相手の状況などにも配慮したビジネスマナーとして覚えておきましょう。