「結構です」の言葉の意味
「結構です」という言葉には大きく分けて二つの意味があります。「好ましい」「見事である」といった肯定の意味と、「十分である」「それ以上必要ない」といった、断る時に使われる否定の意味です。ただ「結構です」だけでは、それが肯定の意味か否定の意味か分かりません。質問した内容や文頭につく言葉によって変わってきます。
例えば部下が上司に「例の企画の件ですが、このまま進めてよろしいですか」と聞いたとします。上司が「それで結構です」と答えた場合、これは肯定の意味です。
一方、次のようなシチュエーションの場合はどうでしょう。部下が上司に「お茶をお注ぎしましょうか」と聞いて、上司が「もう結構です」と答えた場合、これは否定の意味になります。つまり、相手がこちらのことに関して「結構です」と言った場合は肯定を表し、相手がこちらの提案に対して「結構です」と言った場合には否定を表します。
「結構」の肯定
・「これでよろしいですか?」「それで結構です」
・「こちらの資料をご確認いただけますか」「結構です」
「結構」の否定
・「新商品をご購入なさいませんか」「いいえ、結構です」
・「またご一緒にお仕事をしませんか」「いいえ、結構です」
「結構です」と同じ意味で「大丈夫です」が若者の間で使われている
近頃、若者の間では「大丈夫です」という言葉が否定の意味の「結構です」と同じ意味で使われることが多くなっています。辞書を引いてみると「大丈夫」という言葉の意味は「(1)立派な男子(2)しっかりしているさま(3)間違いなく」とあります。
明鏡国語辞典には今どきの俗語として「相手の勧誘などを遠回しに拒否する語」とし、注釈として「そんな気遣いはなくても問題ないの意から、主に若者が使う」と載せているようです。ただし説明内でも「本来は不適切」としています。
辞典にも記されている通り、本来は間違っている表現です。しかし「結構です」や「必要ないです」といった断り方では直接的すぎる表現のため、相手を傷つけてしまう恐れがあると考え、より婉曲的な柔らかい表現として「大丈夫です」が若者たちの間で使用されるようになりました。
ですが、この「大丈夫です」という表現、ビジネスシーンで使用するのはNGです。特に上司や目上の人への返事でこれを用いるのは大変失礼にあたります。意識して「結構です」を使用するようにしてください。
「大丈夫」のNGな使われ方と本来の正しい言い方
・上司からの問いに対して
「今日仕事が終わったら飲みに行かないか」「大丈夫です」
→本来の正しい言い方「申し訳ありません。今日はどうしても外せない用がございまして、また次の機会に是非お願いします」
・上司に酒をすすめられて
「○○くんも、遠慮しないでもっと飲みなさい」「大丈夫です部長」
→本来の正しい言い方「いえ、もう結構です部長」
「大丈夫です」の他にもビジネスシーンでNGな若者言葉はたくさんあります。普段よく使用している言葉はどうしても身体に染みついてしまっているので気を抜くとポロッと出てしまいます。社会人として恥ずかしい思いをする前に、普段の生活から言葉遣いを正しましょう。
NGな若者言葉
・「ぶっちゃけ」
・「○○っす」
・「マジ」
・「やばい」
・「っていうか」
・「~みたいな」
・「自分的には」
・「ガチで」
・「なるほどですね」
・「とりま」
・「ウケる」
・「○○じゃね?」
「結構です」は目上の人には失礼な言葉
上司や取引先のお客様のような目上の人からの提案に対してメールで返事をする場合、同意したい時「大丈夫です」はビジネスシーンとして不適切ですし、「結構です」は本来、目上の人から目下の人へ言う時の言葉なので、上司やお客様に使用してしまうと失礼にあたる場合があります。正しい言い回しは「構いません」「問題ございません」です。
取引先とのメール例文
【宛先】A社の山田様
【件名】次回打ち合わせの件
【本文】山田様 いつもお世話になっております。○○株式会社第一営業部の佐々木です。次回打ち合わせの日程の件ですが、こちらはその日程で問題ございません。
○月○日14時に本社にてお待ちしております。
それではよろしくお願い致します。
「結構です」を使うときには誤解されないように一言添えるようにしよう
いかがでしたか?ここまで「結構です」という言葉の意味と使い方を中心に説明してきました。注意すべき点は「結構です」はシンプルな表現で最も軽い丁寧語であるため、相手に素っ気ない印象を与えてしまったり、誤解を与えかねない言葉です。
そして「結構です」という言葉単独では肯定か否定か非常に曖昧な表現になりがちです。使用する時には必ず、何か一言添えるように意識しましょう。
「それで結構です」の肯定の意味の場合には賞賛の一言を、「もう結構です」の否定の場合には感謝の言葉を。何より大切なのは、相手への気遣いです。