職業/働き方

日雇い労働者の定義とは?雇用形態と社会保険の適用条件

「日雇い労働者」とはどんな働き方を指すのでしょうか。自由だけど短期で不安定、社会保険などの待遇が心配など様々な印象がありますが、正確に定義まで説明できる方は少ないでしょう。ここで日雇労働者の雇用形態をしっかりと理解しておきましょう。

日雇い労働者の働き方や雇用形態が知りたい!

正社員にアルバイト、パート、派遣、日雇いなどなど…現代の働き方は多様化しており、雇用にも様々な形態がありますが、その違いや条件を明確に説明できるという方は決して多くはないでしょう。
今回は「日雇い労働者」の働き方にスポットを当てて詳しく取り上げます。その定義やメリット・デメリット、他の雇用形態との違いをしっかりと理解して、自分の働き方を見つめ直してみましょう。

日雇い労働者とはどんな労働者?

日雇い労働者とは、一般的には職場を固定していない労働者のことを指します。1つの場所で短期で働いて次々職場を変えていくというような労働者のことで、特に土木・建築業界の現場での契約が多い雇用形態です。

「職場を固定していない」というと幅広い人を指すように感じられますが、雇用保険法において日雇い労働者は「日々雇用される者」または「30日以内の期間を定めて雇用される者」として定義されています(注1)。

日雇い労働者に社会保障制度は適用される?

日雇い労働といえば、短期で契約を結び、それ以外の時間を自由に使える印象がある一方、不安定な印象を持つ方も多いでしょう。
その理由のひとつに社会保険の適用がどうなるのかという不安が挙げられます。ここからは日雇い労働者を取り巻く社会保険制度について説明していきます。

そもそも社会保険とは何か?

社会保険とは、国民が生活するにあたって直面するリスクのために国が設けている社会保障制度のひとつです。加入者が支払う保険料と、国のお金(国庫支出金)によって運営されています。この「加入者の支払い」は一般的には個人による支払いではなく、毎月のお給料から保険料を会社が預かり、会社が従業員分をまとめて支払う場合が多いです。これによって、国民は病気にかかってしまった時の生活、老後の生活などが守られるような仕組みとなっています。

社会保険には医療保険(健康保険)、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5つがありますが、今回は日雇い労働者と特に関係が深い雇用保険と健康保険を中心に解説していきます。

アルバイトが社会保険に加入するための条件

日雇い労働者の雇用保険について

労働者の生活や雇用の安定、就職の促進を目的として、失業者や教育訓練を受ける人が失業等給付金を受け取る制度が雇用保険制度です。

失業手当と聞くと正規雇用の労働者が解雇された際に給付される印象がありますが、短期間で職場が変わる日雇い労働者に対しても、長期雇用前提の正社員などとは別に独自の社会保険制度が設けられています。

日雇い労働者の場合、雇用保険が適用され給付金を受けとるには労働者自身の手続きが必要です。

失業等給付金を受け取るまでの主な流れ

  • 日雇いとして労働するにあたりハローワーク(公共職業安定所)で日雇労働被保険者手帳を発行してもらう
  • 賃金を受け取る際に雇用主から手帳に印紙を貼ってもらう
  • 2ヵ月間で26枚以上の印紙が貼られる
  • 翌月、失業した場合に給付金を受けられるようになる

※この場合の「失業」とは、ハローワークで当日の求人を探しても従事できる仕事がない状態を指します。

日雇労働被保険者となるのは、適用区域内に居住し、適用事業に雇用される方、区域外に居住しているが適用区域内の事業に雇用される方、公共職業安定所長の認可を受けた方です。該当する方には日雇労働被保険者手帳というものが交付されます。

日雇い労働者の健康保険について

雇用保険と同様、日雇い労働者であっても自身で手続きを行うことで健康保険を受けられます。
健康保険を受けるには、雇用する企業が健康保険の適用事業所であること、そして、日雇い労働者として働き始めてから5日以内に地域の年金事務所か指定の市町村で労働者自ら加入手続きを行う必要があります(注2)。

このように、長期雇用でなくとも社会保険制度は適用されるようになっています。きちんと手続きを行い、条件を満たしていれば、日雇い労働の場合であっても「失業手当を受け取れない」「健康保険が適用されない」という心配はないのです。

日雇い労働者であっても確定申告は必要?

ここまでは日雇い労働者が「保障」される制度について説明してきましたが、次は日雇い労働者の「義務」について詳しく触れていきます。

雇用形態に関わらず、給与所得がある人はその金額に基づき所得税を納める義務があります。よく耳にする確定申告というのは、1年間の給与に基づいた所得税を「申告納税」する手続きのことです。

確定申告は必要な場合とそうでない場合があります。原則、年間の給与所得が103万円を超えた場合には所得税を納税する必要があります。すなわち、確定申告の必要があるということです。

この手続きを会社が行うか個人が行うかは、その場合によって異なります。しかし、日雇い労働の契約を結ぶ場合、会社側が手続きをしているケースは少ない傾向にあります。この理由としては、年間の給与が103万円に満たない場合が多いことなどが挙げられます。

したがって、日雇い労働で受給した年間給与が103万円を超える場合、自身で確定申告の手続きを行う必要があります。年間で複数の企業や雇用主の下で働く場合、給与は合算での計算となります。

日雇い労働者の確定申告に関する相談は税務署へ

確定申告を個人で行う場合、もしくは「色々と調べたけれど、そもそも自分が申告する対象者なのかわからない…」という場合、まずは税務署へ相談に行きましょう。

税務署へ行く際の持ち物

  • 1年間の給与所得がわかるもの

複数の職場で働いた場合、年間給与はその合算となります。そのため、全ての職場の給与が分かるようにしましょう。

  • 業務における支出がわかるもの

仕事で使った備品代、携帯電話代などは支出として計算され、給与となりません。

以上のものがあれば税務署の方が判断してくれます。結果として確定申告が必要でなかった場合にも、お金に関する知識や癖をつけるのはとても良いことです。不安な場合にはプロにしっかり相談し、説明を受けるようにしましょう。

非正規雇用者である日雇い労働者となるメリットとデメリットとは?

2017年5月発表の総務省労働局の調査によると、2016年の雇用者人数は5402万人、そのうち3385万人が正規雇用者、2017万人が非正規雇用者という結果が出ています。日雇い労働者もこの非正規雇用者にあたりますが、非正規雇用者は年々増加し続けています。

非正規雇用者が非正規雇用の形態を選ぶ理由というのはさまざまですが、男女共に多かったのが「自分の都合の良い時間に働きたいから」という理由です(注3)。自由に時間や仕事を調整できるというメリットを感じる方も多い一方で、自分自身で保険や税金に関する手続きを行う必要があるということ、そして何より、確実に毎日の仕事があるわけではないという不安定な雇用形態については、日雇い労働者となる上で配慮すべきデメリットでしょう。

日雇い労働者の働き方も一長一短

雇用には様々な形態が存在していますが、今回は日雇い労働者の定義、そしてその社会保険制度や確定申告の方法についてまとめました。主なポイントは以下の5点に整理されます。

日雇いという働き方を含め、多様化している雇用形態。それぞれの働き方にメリットとデメリットが存在します。制度については、よく調べるとそれまでのイメージと異なっている場合もあります。
人生、仕事がすべてではありませんが、「働くために使う時間」は大切なもののひとつです。自分の職種やキャリアを考えた上で、最も良いと考える道を選択していくことが重要です。