退職の種類と解雇の種類【会社の辞め方】

会社を辞める際には、「退職」「解雇」の2種類があります。退職か解雇によって大きく違いますので、退職と解雇の種類を知って、理解しておきましょう。

退職の種類と解雇の種類【会社の辞め方】

退職の種類

退職とは、被雇用者側が労働契約の解除をおこなうことで、その理由から定年退職、自己都合退職、会社都合退職に分けられます。また、退職に至るまでの経緯として、勧奨退職(かんしょうたいしょく)、早期優遇退職(そうきゆうぐうたいしょく)などがあります。

定年退職

定年退職

定年退職とは、各会社の就業規則で明記されている一定の年齢に達した場合に雇用が終了する退職です。定年年齢や定年日は各企業によって様々で、多くは60歳から65歳の間、定年に達した誕生日か、その年度の終わりを以って退職となります。公務員や事業所、会社の多くはこの定年日を設定しており、半ば慣行的に行なわれていますが、雇用者側も労働者側も、労働契約の際に定年退職に合意したこととなります。

定年後の再雇用について

継続雇用

厚生年金の受給が65歳からに引き上げられたことによって、2006年および2013年の改正高年齢者雇用安定法により、労働者が65歳まで安定した雇用を受けられるように、企業は定年退職について対策をしなければいけなくなりました。具体的には、定年年齢を65歳までに引上げること、定年退職後に1年更新の契約の再雇用をすること、定年制の廃止、のいずれかひとつの処置をしなければいけません。多くの場合は定年後の再雇用(継続雇用)で対処されていて、継続雇用後の給料が一定金額未満で退職以前の4分の3未満になった場合、給付金が支給される制度もあります。

定年退職の手続き

定年退職前、退職後にはいろいろと必要な手続きがあります。主に、国民年金、厚生年金、健康保険の手続きがあります。また、定年退職後、再就職をしたいという方であれば、失業保険(雇用保険)の手続きもしなければいけません。退職とともに必要な健康保険の切り替え手続きですが、被扶養者となるのであれば5日以内、健康保険の任意継続であれば20日以内と、退職の翌日から時間がありませんので、早期に選択して手続きが必要です。

定年退職に退職届・退職願は必要?

定年退職の際に退職届が必要かどうかについては、その会社の就業規則や手続きなどにより場合が違いますので、一概に必要、不必要とは言えません。退職届けが必要となる場合はありますが退職願が必要となる場合はその性質からみてほぼ無いと考えてよいでしょう。定年退職は就業規則での決まり、契約の内容ですので、願い申し出るものではないからです。

各会社の人事担当者、もしくは総務などに確認するのがよいでしょう。定年退職の場合、「一身上の都合」ではなく「○月□日をもって満△△歳となります。したがって就業規則により定年退職いたします」といった文章になります。尚、定年退職の退職届の書き方については、就業規則等で決められているケースもありますが、必要な場合は、テンプレートを用意しましたので活用ください。

退職届テンプレート(定年退職フォーマットA4)ダウンロード退職届テンプレート(定年退職フォーマットB5)ダウンロード

自己都合退職

自己都合退職とは、労働者側の都合・理由により、労働者側からの申し出により退職することで、「退職願」や「退職届」、あるいは「辞表」などの提出によって雇用を終了するものです。自己都合退職の手続きについては就業規則で定められていることが多いです。定年退職を除くと、単純に退職と言えば労働者側の意向によるものと捉えられることが多いので、この自己都合退職を指すことが多いです。

退職の理由は人により様々ですが、失業保険などの給付では自己都合退職と会社都合退職とに区分され、この二つによって方法が変わります。自己都合の場合、3ヶ月間の給付制限があります。

会社都合退職

会社都合退職とは、雇用者側の原因・理由により労働者側が納得して雇用契約を終了することです。理由は会社側の人員整理や、いじめ、嫌がらせ、過度の残業などがあげられます。会社都合退職の場合、退職願、退職届はなく、会社側から一方的に雇用の終了がされるため、退職金や求職者給付金などが優遇されます。また、退職理由が不当であった場合には拒否を申し立てることもできます。広義には勧奨退職や早期優遇退職などもこの会社都合退職にあたりますが、規則上の処置については自己都合か会社都合かはケースバイケースとなります。

勧奨退職

退職勧奨

勧奨退職とは、雇用者から労働者へ退職を勧めることで行なわれる雇用の終了のことを言い、諭旨解雇とほぼ同義となります。勧奨退職が自己都合となるか会社都合となるかについては、雇用者側で退職を勧めていることから会社都合ともとられますし、あるいは根本的原因が労働者側にあることから自己都合ととることもでき、多くは当事者間の話し合いによって決定します。

奨退職が行なわれる背景には、雇用者にとって労働者へ解雇を申し立てる規則には該当しないが、人員整理等の理由により退職を促したいというケースがあり、労働者側からの自発的な退職により事実上、解雇と同様とすることが目的としてあげられます。尚、嫌がらせ等を伴い必要以上に退職勧奨することは民法上の不法行為にあたる「退職強要」と言われ、損害賠償の請求対象となることがあります。

早期優遇退職

早期優遇退職とは、退職の際の優遇処置などを条件に、人員整理のため部署の中で数人、自主的な希望退職を求めることを言います。慣例として定年前に退職を勧めるケースや、人員削減のために臨時で行なわれるケースなどがあり、労働者側は退職金の割増などの条件に合意して退職を申し出ることとなります。自己都合、会社都合の明確な線引きはありませんが、優遇処置の一環として会社都合として扱われることが多いです。

解雇の種類

解雇とは、雇用者側から被雇用者側へ、労働契約の解除を行なうことです。解雇については被雇用者の同意は不要となっており、雇用者側の通告によって成立します。大きくは懲戒解雇と普通解雇に分けることができ、普通解雇として整理解雇、諭旨解雇(ゆしかいこ)などがあります。

懲戒解雇

懲戒免職

懲戒解雇とは、被雇用者側の長期の無断欠勤、会社の金品の横領、職務・会計上での不正、重大な過失による業務の妨害、重大な犯罪行為などの理由により行なわれる解雇です。懲戒解雇はその理由となる事由とこれに対する懲戒の種類・程度が就業規則に明記されている必要があり、また、当該就業規則が周知されている必要があります。尚、公務員の場合は「懲戒免職」と呼ばれます。

懲戒免職の場合、事前の解雇予告や手当の支給はされず、労働基準監督署長の解雇予告の除外認定により即時解雇となります。また、退職金の支給も多くの場合ありません。懲罰処分であるため、再就職が非常に困難となる背景もあり、酌量として諭旨退職(勧奨退職)を勧めることも多くあります。

普通解雇

普通解雇とは会社の都合により行なわれる懲戒解雇以外の事由による解雇の事をさします。一般的に、単に解雇と言う場合は、普通解雇を指します。判例から区別されることもありますが、整理解雇も普通解雇に属するものです。

普通解雇の事由は就業規則に定められている必要があり、客観的に合理性があるか、解雇としての相当性があるか審査されます。また、普通解雇にあたって雇用者は被雇用者へ30日前までの解雇予告、あるいは解雇予告手当ての支給が必要となります。一般的な理由の例としては、怪我や病気により労働できない状態、著しい職務怠慢、暴力や暴言などがあります。但しそれらは業務への影響や、注意・教育、突発性や合理的理由などを踏まえて十分検討された後に解雇が行なわれる必要があります。

整理解雇

人員整理

整理解雇とは、事業の継続が現在、あるいは将来予想される困難について、人員整理として余剰労働者を解雇することです。一般的に言う「リストラ」とはこの整理解雇にあたります。普通解雇に属するものですが、企業の経営上の理由により行なわれる解雇であるため、区別して呼びます。

整理解雇の合理性・相当性の判断に整理解雇の四要件というものがあり、本当に人員整理の必要性があるか、解雇回避の努力義務を行なったか、被解雇者選定に合理性があるか、説明・協議は十分に行なわれたか、の4要件のすべてに適合しているかをもとに有効・無効の考慮がされます。

諭旨解雇

諭旨解雇とは、懲戒解雇を普通解雇に、あるいは労働者に自発的な退職の説得を行なうことで、懲戒処分を情状酌量として避けることです。後者は退職勧奨と呼ばれます。

退職勧奨は就業規則に定められた解雇の規定にあたるかの判断が微妙な場合にも用いられ、嫌がらせやパワハラなどにより強圧的に行われる勧奨は退職強要と呼ばれ、違法となります。但し、そもそもの事由が懲戒解雇にある場合は、懲戒解雇が認められる可能性はあります。