働きながら大学に通う社会人が気を付けるべきポイント

働きながら大学に通いたいというニーズが徐々に増えてきていますが、仕事と大学の両立というのは簡単なことではありません。大学進学は入ってからよりも、入る前にいかに準備と計画をするかが大事になります。働きながら大学に通学する社会人が押さえるべきポイントを整理して紹介していきます。

働きながら大学に通う社会人が気を付けるべきポイント

働きながら大学に通うのは可能か?

既に社会で働いている中で、大学や専門学校で学び直しを考えている人や、経済的な事情のため、働きながら大学への進学ができないかを模索しているという人も多くなっています。

しかし、多くのケースでは大学進学への希望はあるものの、実際に可能かを考えたときに「両立が難しい」という理由から大学に通うことを諦めてしまっている現状があります。

実際は働きながら大学に通うことは可能で、激務と言われるような業界で働きながらも大学に通って卒業した人もいます。どのようにすると働きながら大学に通うことが可能になるのか、また大学選びで社会人が気を付けるべきポイントについて考えてみましょう。

働きながら大学に通うことについて説明したイラスト

働きながら大学に通うことは珍しいことではない

働き方改革や教育改革が進められている現在、人生における学校教育を、できるだけ一定の期間に限定せずに生涯にわたって分散しようというリカレント教育を政府が推進しています(注1)。

教育にかかる期間が長くなるほど、実際の就業できる期間が短くなりますし、結婚や出産などのライフイベントも遅れがちとなってしまいます。リカレント教育は学びによる負担を減らしたり、経済的事情などで進学できなかった場合でも学ぶチャンスを増やす目的で行われています。

大学の講座を受講している人達

社会人向けのビジネス系ジャンルの大学や大学による公開講座も増え、社会人向けのオープンキャンパスを行ったり、サテライトキャンパス(通いやすいように大学のキャンパスとは別に交通の利便性が高いところに設置したミニキャンパス)等を設置する大学も多くなっています。

芸能人やスポーツ選手が再度大学に入学するというニュースも時々見られますが、働きながら大学に通う事は不可能ではないのです。これからは、「学ぶことに遅すぎることはない」という考え方がさらに普通になっていくと予想されます。

働きながら大学に通う人の目的・理由は様々

働きながら大学に通うのは、率直に言ってとても大変なことです。働くだけでも大変ですし、働かないで大学に行ったとしても留年したり卒業ができない人も一定数います。

また、仕事と学業の両立になれば、その他のプライベートの時間もほとんど取ることはできず、結婚や子育てなどのライフイベントにも支障が出る可能性もあります。

その中で大学に通うのですから、確固とした目的がないと途中で挫折したり、考えてはみるものの諦めてしまうことになるでしょう。一般的な目的を挙げてみます。

1 専門性を高める・身に着けるため

大学の研究で顕微鏡を使っている女性

社会人が働きながら大学進学を決める理由として最も多いのが、個人の専門性をさらに高めるためです。大学院への入学や、自分の弱い分野、もしくは仕事などで必要となっている先端分野を学ぶために大学へ入るパターンです。明確な目標があり、継続しやすい理由です。

2 就職・転職のため

自分の将来の就職や転職のために、専門性のある内容を学びたいということで大学に入る人も少なくありません。

既に一度大学を卒業した人や、専門学校卒や高卒など、大学卒業という学歴が無いために進路の幅が狭まっている場合、教員など一部の大学での単位取得が必要な職業に就くために大学に通う人もいます。就職や転職のためという目的が明確だと意欲も続きやすいです。

3 趣味で学びたいため

大学で学ぶというのは、必ずしも実用的な理由ばかりとは限りません。仕事などには直接関係がないとしても、知的な好奇心を満たしたり、個人的な関心分野についてしっかり学びたいということで大学進学を決意する社会人もいます。

働きながら大学に通う人が注意するべきポイント

働きながら大学に通う人が、きちんと学ぶことができるようにするためには、いくつかのポイントがありますので、しっかり確認しておきましょう。

1 自分の目的に合った形の大学や立場を考える

社会人が大学を選ぶポイントについて説明

学ぶ目的があって大学に入ろうと考えるものですが、その目的に合った大学選びは決して学校や学部・学科を選ぶだけではありません開講時間を考えるなら、全日制の大学もありますし、夜間学部で学ぶ方法もあれば通信教育中心の大学もあります。

また、専門性を考えるなら社会人向けの大学院大学もあります。そして、大学の種類だけでなく、学生としての立場も考えるべきです。一般的な生徒として入学することもできますし、科目履修生や聴講生といった形での入学も可能です。

2 学費に注意する

働きながら大学に通うという選択をする人の中には、自分の生活費を自分で賄う必要のある人も少なくありません。

大学の学費は入学金や授業料だけでなく、テキストの費用や実習の参加費など様々な形で発生するものです。様々な出費が出ていくタイミングなどに注意し、できるだけしっかり準備できた状態で入学しましょう。

3 時間と場所には特に注意が必要

働きながら通うことができる大学があったとしても、実際に通えるかは時間と場所が大きな制約条件となります。職場などから近いことや、授業の開始時間が自分の働き方などに合っている必要がありますし、週末の授業などにもちゃんと参加できることが最低限の条件となります。

4 入試対策はしっかりすること

大学試験の勉強をしている女性

働きながら大学で学ぶという場合でも、入学試験は当然行われます。夜間学部の場合には全日制の学校と同じく試験が行われますし、社会人向けの募集がある大学だとしても、最低でも面接があり、多くの場合はプラスして小論文や英語などの試験が行われます。

入試と聞くと身構えてしまいますが、社会人の場合、最低限こうした入試をクリアできるくらいの学力や専門知識がないと、却って大学入学後の学習効率が悪くなって苦労することになります。そのため、入試対策はしっかり行って、基礎学力を向上させておいた方が良いでしょう。

5 職場の理解が最も大切

実際に大学に入学ができたとしても、ちゃんと授業を履修し、単位を取得できるかどうかは職場の理解が最も重要です。

理解のある職場なら、スケジューリングなどに配慮してできるだけ定時で帰らせてくれるなど対応してくれますが、個人の都合に構わず残業を入れてくる会社もあります。挫折することなく卒業するために職場や同僚がどれだけ大学へ通うことを理解し支援してくれるかも大切なことです。

6 健康は必須条件

働きながら大学に通うことはダブルワークをするようなものですので、まず健康でなければ仕事も学業も共倒れになってしまうリスクがあります。ハードな毎日になりますが、健康管理に注意し、生活リズムをできるだけ保つようにしましょう。

働きながら学べる大学探しのコツ

働きながら大学に通うには、それを認めてもらえる大学を見つけることから始めましょう。働きながら学べる大学探しは、どのようにしたら良いのかコツを紹介します。

1 社会人向けの募集のある大学を探す

今はリカレント教育(学校教育を人生の長い期間に分散させるという教育の考え)という考えが広まりつつありますので、その中で社会人に対して募集をしている大学も増えつつあります。

こうした大学であれば、一般的な社会人のスケジュールに配慮したカリキュラムが組まれているので、学びやすい環境が作られていることが多いです。特に、出席によって成績などを採点するといった部分が大幅に緩和されることが多いです。

2 取得が必要な単位数や授業に注意する

大学の講義を受講している男性

大学によって、卒業に必要な単位数や必修科目が違ってきます。そして、必修科目や卒業に必要な単位を満たすための授業が、どの時間帯に行われているかはしっかり確認しておく必要があります。

学校や科目によっては、日中に普通の学生と同じ授業を取らないといけない場合には単位取得や卒業へのハードルが高くなることに注意が必要です。

3 授業のフォローが充実している大学を選ぶ

今は授業の資料や授業風景を、欠席者のためにWeb上でフォローできるようにしてくれている大学も少しずつ出てきています。社会人向けの大学の中には、こうしたフォロー環境が充実しているところもありますので、出席状況などに自信がない人は最初に注意しておくと良いでしょう。

4 スクーリングや試験の日程が決まっている大学を探す

社会人でも通信制の大学なら自分のペースで通うことができますが、それでもスクーリング(学校に出席しての授業)や試験などは最低限通学が必要となります。

単位取得のためですから当然参加するべきなのですが、事前に日程が出ていないと休みを前もって確保することができません。自分の都合や会社の繁忙期などとできるだけ重ならないところを選ぶことはもちろん、必要な休暇を取れるように有給休暇の日数などを確認しておきましょう

働きながら大学に通うなら「計画的に」実行しよう

働きながら大学に通うための環境は、ひと昔前と比較するとずっと良くなっています。社会的な理解も進んでいますし、少子化が進む中で大学側も社会人の獲得に力を入れてきています。

しかし、環境が整ってきたとしても実際に通って学ぶのは個人です。大学で何をどのように学ぶのか、そのために必要な時間の確保をどうするのか、周囲にどう協力を要請するのかなど、よく考えて計画的に実行していくことが必要です。

参考文献

  • 注1:文部科学省「リカレント教育」