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「お納めください」の意味・敬語・類語・マナーのある使い方

「お納めください」というフレーズは、ビジネスシーンや社会生活の様々なところで使われています。よく使うという人もいれば、全然使わない人もいますが、使い慣れるとマナーがあるように見えますし、周囲の印象も良くなります。「お納めください」の正しい使い方や、類語などを確認しましょう。

「お納めください」は慣れるまで使い所が難しい

日本語表現の中でも、外国人の人は特に敬語が難しいと感じるそうですが、それは日本人でも同じではないでしょうか。言葉遣いひとつでニュアンスが異なるのはわかりますが、正しい使い方はもちろん、メールなどでは正しい漢字を書かないといけないため、プレッシャーと感じる人は多いです。

「お納めください」は頻繁に見る人もいれば、全然見ない人もいる言葉で、相当慣れるまで使い所が難しい言葉です。正しい言葉遣いを覚えて、スマートに使いこなすことができれば、マナーのある人に見えますし、周囲の印象もよくなっていくことでしょう。「お納めください」の正しい使い方について確認しましょう。

「お納めください」の辞書的な意味

「お納めください」を辞書で探してみると、「物やお金を渡す時に添える言葉」というような説明があり、「受け取ってください」という意味だということがわかります。もう少し丁寧に解説すると、「納める」というのは「受け取り、しまう」というニュアンスがありますので、「(大事なものですので)どうぞ受け取って、しまってください」「しっかり受け取ってください」というようなニュアンスとなります。

基本的に「納める」という言葉においては、物そのものが移動するだけでなく、その所有権も移動します。そのため、本などを貸す際に「お納めください」と使うことはできません。

文法的には「納めて」という命令語に、尊敬を表す接頭語「お」と丁寧語を作る接尾語「ください」をつけている敬語表現です。そのため、ビジネスの場面だとしても目上の人が目下の人に対して「お納めください」と使うことはありませんので注意してください。

「お納めください」の類語

「お納めください」は物や金銭を渡す際に使う言葉ですが、こうした場合に使う言葉は他にもあります。正しい場面で正しく使えるように意識しておきましょう。

書類を渡す「ご査収ください」

書類やデータを手渡したり、またメールで送る場合には「お納めください」とは言いません。この場合は「ご査収ください」というのが正しいビジネスマナーです。書類だけでなく、画像や動画のデータも同様に渡します。「ご査収ください」は「受け取って目を通してください」の意になりますので、それに伴ったモノの受け渡しが発生した場合と考えてください。逆に、渡すだけで目的が達成される場合には「ご査収ください」は適切ではありません。

お土産や贈り物は「ご笑納ください」

あまり聞き慣れない言葉ですが、お土産や贈り物については「ご笑納ください」という言い回しを使うことがあります。この場合、「お納めください」でも間違いではありませんが、年貢や税金のような義務感を感じさせてしまう場合もあります。「ご笑納ください」は「つまらないものですが、笑って受け取っていただけたら幸いです」というニュアンスで使う言葉です。

ビジネスにおける「お納めください」の使い方と例文

ビジネスシーンでよく使われる「お納めください」の例文を見ながら、どのような場合に使うといいのか確認しましょう。

お金のやりとりがある場合の「お納めください」

最も多く使われるのが、お金のやりとりがある場合です。会費やカンパなどを相手に受け取ってもらいたい時に使います。「少しばかりの気持ちです。お納めください」というように使います。

と使われますが、ビジネスシーンではいわゆる商品のやり取りなどでの「当然の代価」ではあまり使われず、その他で発生したお金のやり取りで使われます。相手側がそのお金をもらうことに躊躇がある場合に使うケースが多いです。

無遠慮に受け取ることはビジネスマナーでは失礼にあたりますので、お金のやり取りでは、すぐに受け取ることはしないものです。その場合、本当に要らないのではなく、遠慮をしているだけということがほとんどですので、「お納めください」と気持ちを押してあげることで相手もスッキリと受け取ることができます。

商品などを納入する場合の「お納めください」

ビジネスでは、注文の商品を納品する、納入する際に「お納めください」と使うことがあります。「○月○日までにお納めいただけると助かります」など、取引上の物品の受け渡しのことを指して使います。この場合、「収める」などの他の字を使わないように注意しましょう。

のように、商品をしかるべきところに持ち込む(渡す)ケースで使います。こうしたケースで「収める」の字を当ててしまうと、「片付けてどこかにしまう」という意となり、本意が伝わらないことがありますので気をつけてください。

贈り物を渡す場合の「お納めください」

贈り物を渡す場合にも「お納めください」と言って渡す場合があります。「ささやかなものですが、お納めください」「よろしければお納めください」と言って渡します。単に「ぜひ受け取ってください」と言うより、相手を立てる敬語のニュアンスになります。

ビジネスシーンでは接待の際の贈り物だけでなく、商談の際に情報提供としての「お土産」を持っていくことも少なくありません。それなりに価値があるもので、相手も「わざわざすみません」と恐縮するようなものであれば、「お納めください」が適切です。会社のノベルティのボールペンなど、それほど価値の高くないものだと「お納めください」は少々大げさです。

手紙や写真を渡す場合の「お納めください」

手紙や写真を渡す場合にも「お納めください」を使う場合がありますが、いつでも使えるのではなく、渡す手紙や写真が、相手にとって贈り物などにあたるような場合です。

冠婚葬祭で使う「お納めください」

ビジネスシーンと並び、「お納めください」を使うことが多いのは冠婚葬祭の場面です。この場合の使用例も確認しておきましょう。

お金のやりとりがある場合の「お納めください」

結納金などの多額のお金や、また結婚式などのご祝儀、お葬式などの法事における香典など、お金のやりとりがある場合は、その多寡によらず「ご霊前へお納めください」などのように「お納めください」を使うことができます。冠婚葬祭においては、お金の種類や金額によらず「お納めください」を使うのが一般的です。

贈り物を渡す場合の「お納めください」

贈り物を渡す場合にも「お納めください」と言って渡すことができます。基本的にはお金のやりとりがある場合と同じです。相手に受け取ってほしいという気持ちを表します。ビジネス同様、相手が受け取ることに恐縮するようなケースで気持ちを押すために使います。

その他にも使われる「お納めください」

税金や年金、保険料、公共料金などでよく「お納めください」という言葉を耳にします。

「お納めください」という言葉は、しかるべき所との金品のやり取りで使われますから、定期的に使用し、支払うべきお金が発生する税金や年金、保険料、公共料金などで使われるのは自然です。

こうした場合、ビジネスマナーとして一般的に敬語表現を用いていますので、立場上の上下は関係ありませんので注意してください。

「お納めください」の「おさめる」は同音異義語が多いので漢字に注意

「お納めください」は「納める」の敬語表現にあたりますが、「おさめる」は同音異義語が多いために、正しい漢字を使い、正しい場面で使わなければなりません。

納める

「納める」は「限度内で済ませる。受け取り手に渡す」という意味があります。熟語で表すと「納入」「納付」などの熟語がありますが、物品や金銭をしかるべき相手に渡す時に使われます。また、「決まった場所にしまいこむ」などの意味があり、金庫や口座などからお金を出し入れすることを「出納」と言ったりし、昔は自治体の会計係の長を「出納長」や「出納役」と言いました。そのため、税金などではこの「納める」が基本的に使われています。

治める

「治める」は、「安定した状態にする。落ち着かせる」という意味を持ちます。「国を治める」などのように使う言葉で、政治や歴史で使われます。「お治めください」と使えなくはありませんが、この場合は「統治してください」という意味になりますので誤用に注意しましょう。

修める

「修める」は「学問や技術を身につける」という意味や、「行いを正しくする」という意味になります。「修了式」「修行」、「修正」などと使いますね。「お修めください」とは言葉としては使えなくはないですが、実際に使う場面はまずありません。

収める

「収める」は「しまう。記録する。成し遂げる」などの意味を持っています。「収納」「収入」という言葉があるように、「納める」と同じようなニュアンスも持っています。「お収めください」は「どうぞこの景色をカメラにお収めください」のように使いますが、お金に対しては使いません。「片付け」や「記録」というニュアンスが強い言葉です。

「納める」と「収める」は対象がどこにあるか注意

「給食費を納める」と「給食費を収める」では、意味するところがやや違います。前者は「支払う」ことで給食費が相手に移動するのに対し、後者の場合は懐やカバンなどに「片付ける」ことになるために自分が給食費を持つことになります。こうしたニュアンスの違いを知らないと、メールなどを受け取った相手が混乱する可能性がありますので注意しましょう。

「お納めください」への返事は「頂戴いたします」がベター

「お納めください」と言われた場合には、対応する返事として「頂戴いたします」を使うのがベターです。お金や物を渡す側が、「ぜひ受け取ってほしい」という気持ちを告げてきていますので、「受け取ります」と意志を表示するのがマナーとなります。できれば「ありがたく頂戴いたします」と感謝の気持ちを加えるとよりスマートです。

他にも、「ありがとうございます」「受領いたしました」や「受け取りました」「確認しました」というような、「受け取った事実」や「受け取りたい気持ち、感謝」を表す返事なら適切です。

「お納めください」は気持ちを押してあげる言葉

「お納めください」はビジネスシーンだけでなく、様々な場面で使うことがあるフレーズです。

「お納めください」は用法も大事ですが、もっと大事なことは「(相手に)受け取ってほしい」という気持ちを伝えることです。何かを渡される際に、つい遠慮してしまう人も、「お納めください」と一言もらえると気持ちを押してもらえるのでスッキリ受け取ることができます。

敬語表現でもありますが、相手を気遣うというビジネスマナーとしてぜひ覚えておいて欲しい表現です。慣れれば自然に出てきますので、使える場面では積極的に使っていきましょう。