敬語/英語/メール

「とんでもございません」の意味・言い換え・正しい使い方例文

「とんでもございません」は、本来は間違った使い方ですが最近はOKになっている用法もあります。本来の意味や用法を正しく理解し、その上で使っても良い場合を正しく理解しましょう。類語や例文なども一緒に紹介します。

「とんでもございません」は実は間違った敬語の使い方の場合がある

ビジネスにおける会話では、時折「とんでもございません」という言葉が聞こえてくることがありますが、厳密には間違った言葉の使い方である場合があります。年配の人の中には、こうした敬語の間違い、乱れについて厳しく評価している人もいますので、間違った使い方を続けていると評価を下げられてしまう恐れがあります。逆に正しい言葉遣いを身につけることで評価が上がることもあります。

ここでは、「とんでもございません」が間違っている理由や正しい使い方、言い換え方などについて確認していくことにしましょう。

「とんでもございません」の辞書的な意味と用法

「とんでもございません」を辞書で引くと、まず「とんでもない」の敬語・丁寧表現であることがわかります。「とんでもない」は「途でもない」が語源になっており、「途方もない」という意味が基本で、「まったく思いがけない」「大変なことだ、けしからん」また、「強い否定の言葉」という意味があります。大きく3つの意味がありますが、どのような場面で「とんでもございません」を使っているかよく考えてみましょう。

1.「まったく思いがけない」という意味での「とんでもございません」

「まったく思いがけない」については、「とんでもないことが起こった」と使うわけですが、「とんでもござらん(ござらない)ことが起こった」という使い方はしません。この意味では「とんでもない」はその後の「こと」にかかっており、敬語や丁寧な表現にするなら「とんでもございません」ではなく「とんでもないことでございます」が正解になります。

2.「大変なことだ、けしからん」という意味での「とんでもございません」

「大変なことだ、けしからん」の意で考えてみた時には、目上の相手の意見を「大変だ、けしからん」と言って非難することはまずありません。そのため、この用法では敬語として使うことはありません。そのため、「とんでもございません」と使う必要はなく、「とんでもない」だけになります。

3.強い否定の言葉として使う「とんでもございません」

強い否定の言葉として使う場合は、「先日は弊社の社員が大変お世話になったと伺っております」「いえいえ、とんでもございません。当然のことをしたまでです」というようなやり取りで使われます。

敬語表現では本来、相手を否定することはなく、肯定の形を取るべきで、「とんでもないことでございます」が正しい表現です。しかし、文化庁が2007年(平成19年)に発表した「敬語の指針」では、許容の範囲内であるとされています。そのため、現在この用法においては「とんでもございません」は使っても大丈夫です。

「とんでもございません」より「とんでもない」を使った方が良い場合の例文

「とんでもない」を使った方が、「とんでもございません」を使うよりも適切な場合があります。「とんでもない」を使った方が良いケースを例文で見てみましょう。

「とんでもございません」より「とんでもない」を使った方が適切な場合の例文1

「とんでもない」を使った方が適切な場合の例文1

「今回のプロジェクトにおいては、下請け会社が急に倒産を発表し、人員が不足するというとんでもないことが起こりました。今後は、こういったことがないように下請けの経営状況を精査し、信頼できる企業に業務を委託するべきかと存じます」

「はい、まったく仰る通りです。先日の件は誠に信じがたいことでしたが、これもコストを切り詰めていく中で避けられないことだったのかもしれません。外部に頼らず、自社である程度内製できる体制を作っていくことも検討する必要があるのではないでしょうか」

「思いがけない」の意で「とんでもない」を使う場合、基本的にメールなどの文中ではなく、口語の中で用いられます。この例文ではプロジェクトの中で生じた「とんでもない」事態について論じていますが、「信じがたい」とも表現されています。

「とんでもない」よりも「信じがたい」の方が、事実に対しての評価を避けているニュアンスで、「とんでもない」の方がより否定的な評価をしているニュアンスが感じられます。言葉の選び方ひとつで、与える印象が異なってきますので、こうした場合により適切な言葉を選べるようにしましょう。

「とんでもございません」より「とんでもない」を使った方が適切な場合の例文2

「とんでもない」を使った方が適切な場合の例文2

「社長、先月のA営業部の成績が、とんでもないことになっています!」

「何だって!急いで営業部長を呼び、状況を報告させてくれ」

「社長、実は、A営業部の成績が、前年比220%の伸びを示しています!」

「え?悪い報告じゃないの?」

「とんでもない」は「思いがけない」という意味で使いますが、決して悪い意味ばかりではありません。この例文のように、「とんでもない」と言って良い報告をしてしまうと誤解を招くことになりかねません。そのため、良い報告の場合は「とんでもない成果をあげています」の「成果」のようにポジティブな内容をもった単語を一緒に使うか、「素晴らしいことになっています!」などわかりやすい表現を使った方がベターです。

当然、このような使い方をする場合は「とんでもございません」とは言いません。「とんでもない」はあくまで形容詞のような扱いです。

「とんでもございません」を使う場合の例文

次は、「とんでもございません」を使う場合の例文を紹介します。強い否定の意味を表す際は「とんでもございません」という使い方をしても大丈夫です。例文で見てみましょう。

「とんでもございません」を使う場合の例文1

「とんでもございません」を使う場合の例文1

「A君が配属されてきて、部内の雰囲気が本当に変わったと思う。特に、皆が規律をしっかり守り、チームとしての一体感が出てきた。率先垂範してくれるリーダーがいるというのはやはり大きなことだね」

「とんでもございません。私はただ当然のことをしているだけで、部内のメンバーが持っているポテンシャルが高かったということでございます。また、部長の細かなご指導の賜物です」

「とんでもございません」を用いる場合は、相手が自分にしてくれた賛辞に対して謙遜する場合に使います。また、その内容を受けて話を広げたり、変えたりする場合「とんでもございません」を使うことができます。

ちなみに、「とんでもございません」に対して、否定形ではなく肯定的に受け止め返したい場合は、以下の例文のように素直に「ありがとうございます」「光栄です」などと返すと良いでしょう。

「とんでもございません」を使う場合の例文2

「とんでもございません」を使う場合の例文2

○○株式会社 △△様

いつもお世話になっております。

先日はお見積り資料、ありがとうございました。

>ご多用の中、いつも弊社との面談に長時間を割いていただき誠にありがとうございます。業務の方に差し障りが出てないかと心配です。

とんでもございません。
こちらこそ、いつも有用な情報提供をいただいておりますので、業務上価値ある時間として優先して時間を作りたく考えております。今後もいつでも忌憚なくご訪問くださったら幸いです。

何卒、よろしくお願い申し上げます。

「とんでもございません」を否定として使う場合は、メールなどの文書でも使うことができます。その場合は、誤解を招かないようにどのトピックに対して「とんでもございません」なのかを明示するようにするのがマナーです。また、「とんでもございません」と否定だけしないで、後に続けてどのように考えているのかを伝えるようにしましょう。

「とんでもない」と同様に「ございません」が使えない表現

「とんでもない」という言葉を本来は「とんでもございません」と表現しないように、「~ない」を「~ございません」にできない表現は他にもあります。

「しょうがない」は「ない」だけを切り取って使うことはできない

「仕方がない」「仕様がない」という言葉が崩れてできている「しょうがない」という表現も、「しょうがございません」などと使うことはありません。これも形容詞的に使われていますので、「ない」だけを切り取って変化させることはできません。

「もったいない」は「もったいないことでございます」という使い方をする

「もったいない」も「もったいございません」とは使わず、「もったいないことでございます」と使います。「もったいない」は「Mottainai」として国際的に認知されている言葉でもあります。

「だらしない」は否定的な意味を持つため敬語にはできない

「だらしない」は基本的に否定的な意味の言葉ですので、敬語にすることはできません。「だらしがありません」「だらしがございません」「だらしがないことでございます」のいずれも、基本的には間違った使い方になります。「だらしない」と注意を目上の方にしたい場合は、「しっかりなさってください」などの別の言い方を考えましょう。

「とんでもございません」の類語・他の言葉での言い換え

「とんでもございません」は、状況によって可・不可が分かれる難しい表現です。「とんでもございません」の類語や別の言葉への言い換え方を覚えて、適切な対応ができるようにしましょう。

「信じがたいことでございます」「途方もないことでございます」

「とんでもないことだ」など、「思いがけない」の意で「とんでもございません(とんでもないことでございます)」という言葉を使いたい場合には、「信じがたいことでございます」「途方もないことでございます」などが適切です。

△「先週の配送中の交通事故は、本当にとんでもないことでございました。貴社の皆様も、非常に心を痛めていらっしゃるかと存じます」
○「先週の配送中の交通事故は、本当に信じがたいことでございました。貴社の皆様も、非常に心を痛めていらっしゃるかと存じます」

「不道徳だ」「正気の沙汰ではない」

「大変なことだ、けしからん」という意味の「とんでもない」を表現しようと思っている場合には、「不道徳だ」「正気の沙汰ではない」などの表現もあります。ただ、これらも基本的には相手を非難する言葉になりますので、敬語表現として実際に相手に向けて使うかは微妙なところです。

△「先日の会議の場での発言は、誠にとんでもないものでした」
△「先日の会議の場での発言は、誠に正気の沙汰ではないものでした」

「滅相もありません」「恐縮です」

強い否定として「とんでもございません」を使う場合、この場合は相手に対して否定をすることで謙遜することが主な目的になります。そのため、「滅相もありません」と使う場合もあります。「滅相もございません」も使えますが、「とんでもございません」と同様、本来は間違った用法ではあるものの許容はされているという言葉ですので、相手によっては印象を悪くしますから避けた方が無難です。

「○○さんは、営業部に異動されてから非常に若返りましたね」
「滅相もありません。食生活により気をつけるようになっただけです」

また、同様の使い方には「恐縮です」という言い方もあります。「恐れて縮みあがる」と書きますが、それだけの身に余る光栄を受けていると謙遜する表現です。

「××さんの作ってくれるプレゼン資料は、デザインセンスが図抜けていて成約率が上がると評判だよ」
「そのように言っていただけて大変恐縮です。今後も精進したく存じます」

「とんでもございません」などの敬語はそもそもどうして使うのか

ここまで敬語表見の「とんでもございません」の意味や使い方、類語などを見てきましたが、ビジネスシーンにおいてそもそも敬語はどうして使う必要があるのでしょうか。この部分の理解が曖昧だと、敬語を使う理由や、敬語の使い方について何が良く、何が良くないのかの感性が育ちません。

敬語を使う理由・目的は、相手に対して敬意を示すことです。昔は身分差などからそのようにする必要がありましたが、現在は身分差というよりも、ビジネスパートナーとして、社会人の一人としての相手を尊重し、不快な思いをさせないために用います。いわゆる礼儀作法、マナーの範囲です。

昔から日本では、お祝いの席や尊い身分の人に対しては「忌み言葉」と言われるような縁起の悪い言葉は使わないように注意深く配慮がされていました。忌み言葉は言葉そのものが否定的な意味を持っていたり、場にそぐわない意味を連想させたりするような言葉です。敬語を理解するためには、このような背景もしっかり理解しておく必要があります。

「とんでもございません」はニュアンスによって使い方に注意が必要

「とんでもございません」は、言葉のニュアンスによって可にも不可にもなる少々難しい言葉です。使い慣れてくると適切なものを選べるようになりますが、慣れるまでは勢いで使ってしまわないように、言葉が持つニュアンスを理解した上で、しっかり使い方をチェックするようにしましょう。

また、「とんでもございません」を「とんでもない」にしても、実はさほど失礼になることはありません。迷うようであれば、「とんでもない」を使った表現にした方が確実です。