パート・アルバイトがもらえる有給休暇の日数とその計算方法

パートの立場では有給休暇は取れないと思っている人も多いのですが、有給休暇は雇用形態に関係なく、一定の条件を満たせば取得可能です。スムーズに有給取得できるよう日頃から周囲と関係を良好に保つことが大切です。パートが有給休暇を取得するためのルールや条件、方法について確認してみましょう。

パート・アルバイトがもらえる有給休暇の日数とその計算方法

パートやアルバイトでも有給休暇はもらえる!

パートやアルバイトをしている人であれば「休みがほしい」と思うこともあるでしょうが、有給休暇は実はほしいと考えるまでもなく存在している労働者の休む権利です。
有給休暇は労働基準法によって労働者の権利に定められており、正社員かパート・アルバイトかなどの立場に限らず、一定の条件を満たすことによって誰でも取得することが可能となっています

しかし、有給休暇のルールを労働者当人はもちろんのこと、企業経営者や人事担当者が知らないという場合も多く、権利はあれども使えないということも少なくありません。その反面、権利があるからと労働者側がそればかりを主張するのもトラブルになりかねません。

パートでも有給休暇を取得することは可能ですが、有休をよりよく活用するためにも、法律について確認し、どのように取得するべきかを考えてみましょう。

有給休暇の取得ルールを理解しよう

ソファに座り新聞を読んでいる女性

有給休暇は正式には「年次有給休暇」と言い、休暇を取得してもその間の賃金が支払われる制度のことです。特定の条件を満たすことで権利を取得することが可能となります。

  • 雇い入れの日から6か月以上、継続的に勤務を続けている
  • 出産・育児・労災・有給取得を除き、全労働日数の8割以上出勤した実績がある

有給休暇が付与されるタイミングは、継続勤務期間が経過した時点です。これより遅く付与することは禁じられています。また、雇い入れからの勤務日数は試用期間も含まれます。

条件を満たすことによって、フルタイムの労働者であれば最低年に10日以上の有給休暇が与えられることになっていますが、パートタイムの場合は比例配分という形で、フルタイムには満たないとしても勤務実績に応じた日数分の有給休暇が与えられることになっています。

パート・アルバイトがもらえる有給休暇の日数

パートやアルバイトはフルタイムではない労働者、週に30時間未満かつ、週4日以内または年間216日以内で勤務している労働者として考えます。もしも週に30時間以上勤務する場合や、一日4時間勤務でも週5日又は217日以上勤務する場合は、フルタイムと同じ有給休暇が付与されることになります。

雇入れ日から起算した継続勤務期間別における有給休暇の日数

継続勤務期間が0.5~3.5年の場合

週所定
労働日数
1年間の所定
労働日数
継続勤務期間
(単位:年)
0.5 1.5 2.5 3.5
4日 169日~216日 7日 8日 9日 10日
3日 121日~168日 5日 6日 6日 8日
2日 73日~120日 3日 4日 4日 5日
1日 48日~72日 1日 2日 2日 2日

継続勤務期間が4.5年以上の場合

週所定
労働日数
1年間の所定
労働日数
継続勤務期間
(単位:年)
4.5 5.5 6.5以上
4日 169日~216日 12日 13日 15日
3日 121日~168日 9日 10日 11日
2日 73日~120日 6日 6日 7日
1日 48日~72日 3日 3日 3日

引用元:年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。|厚生労働省

例:10ヶ月継続勤務・週3日勤務の場合

10ヶ月間継続で勤務している人で、週に3日の勤務が決まっている場合には5日が年次有給休暇の日数となります。

例:2年継続勤務・不安定なシフト勤務の場合

週や月の勤務時間が不安定なシフト制の働き方の場合は、基準日直前の実績を用いて計算するようになります。もし、基準日までの半年で80日勤務しているなら、年に160日勤務していると考えて日数を計算します。この場合、取得可能な年次有給休暇の日数は6日となります。

事前に労働者と企業の間で取り交わされる労使協定があれば、有給休暇は年間5日までは時間単位での取得が可能です。時効は2年で、付与されても使わない場合には権利は消滅します。

パート・アルバイトがもらえる有給休暇の金額の計算方法

お客様の会計をレジで処理するカフェ店員のアルバイト

パートやアルバイトでは一日の給与が違う場合も多く、それに伴って有給休暇の金額は変動します。就業規則に定めがあればよいのですが、万が一ない場合は計算方法について確認しておいた方がよいでしょう。

平均賃金から計算する

過去3ヶ月の支給賃金実績からその日額平均を計算して支給する方法です。この場合、賞与等の臨時給付や労災により遅刻・早退した日は除きます。

所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金で計算する

シフトなどで既に労働時間が決まっているのであれば、その時間と時給をかけたものが有給休暇による賃金として計算することができます。この場合、労働時間が長い日に取得すると金額が大きくなります。

健康保険の標準報酬日額で計算する

健康保険では標準報酬日額というものが定められていますが、それを有給休暇時の支給額とするというものです。

パート、アルバイトの有給休暇の申請の仕方

有給休暇の取り方については法律などで規定されておらず、申請方法もその企業によって異なります。しかし、申請方法は正社員でもパートでもアルバイトでも同じです。

年次有給休暇は、法律上は「労働者が請求する時季に与えなければならない」という定めがありますが、実際に自由に取得してしまうと事業活動が回らなくなるケースも出てきます。そのため、基本的には病欠や緊急時を除き、事前に申請と許可をもらうべきです。

有給休暇申請書のイラスト

もちろん、労働者の権利になりますので、本来は理由の内容などによらず企業は休暇の申請に対しては許諾しなくてはなりません。しかし、労働者が請求した時季に年次有給休暇を与えることが事業運営を妨げる場合、事業者側が有給の取得時期の再考を求めることができる時季変更権を行使することがあります。その場合には特別な理由がない限りタイミングを考え直しましょう。

しかし、有給休暇が取れることを事業者側が知らない場合には、そもそも有給について案内がないケースもあります。職場の有給制度について知りたい場合には、まずは先輩や同僚などに相談してみるのがよいでしょう。

労働者側も事業者側も権利を振りかざすだけではトラブルも起こりやすくなります。普段からのコミュニケーションなどをしっかり行い、事業運営上の妨げにならないよう配慮が必要です。

パートやアルバイトが有給休暇を取得することで立場が悪くなることはないの?

年次有給休暇の取得を理由に、労働者に対して不利益な取扱いをすることは、労働基準法によって禁止されています。有給休暇を取得したことを理由に昇給がなくなったり、解雇するようなことがあれば法律違反となります。万が一こうしたことがあれば労働基準監督署などに相談してみると良いでしょう。

労働基準監督署のイラストを指さすスーツ姿の女性

正社員以外のパートタイマーに有給休暇の取得を認めていない会社も多いのですが、労使とも法律を知らないケースや、意図的に隠している場合も少なくありません。

有給休暇は条件さえ満たしていれば自動的に発生する権利であり、もしパートタイマーに有給休暇を消化させていない場合には、労働基準監督署に通報することで調査や是正勧告をしてもらうことも可能です。誰が通報をしたかが会社側に知られることはありませんので安心しましょう。

ただし、法律上は守られているとしても、有給休暇の取得の仕方やタイミングによっては、経営者や同僚からの心証が悪くなる可能性はあります。そのようなことにならないよう、普段から他のスタッフと良好な関係を築いておくことが大切です。

パートやアルバイトが有給休暇を取得するときに注意したいこと

カフェでお客様に紅茶を配るパートの店員

パートやアルバイトに有給休暇があるとしても、有給休暇が発生するのは「本来勤務する日」だということに注意が必要です。

たとえば、週に4日の勤務シフトが組まれている人が、7日分の有給を持っているからと言って、1週間をまるまる休みにしたからと7日分の賃金がもらえるわけではないということです。この場合、有給としてカウントされるのは本来の出勤日である4日分のみとなります。有給休暇を使う側の失敗として多いパターンですので注意してください。

有給休暇は、あくまで休暇をもらうことによって経済的に困窮したりすることがないように定められているものであり、楽にお金をもらうことが目的ではないのです。

パートやアルバイトでも有給休暇はもらえます

パートやアルバイトの立場だとしても、有給休暇は法律上の権利ですので有給の取得は可能です。ただし、フルタイムと比較すると規則が企業によっては明確でないことが多く、また日数や賃金計算も複雑になる面があり、制度がうまく活用されていないことが多いです。

今は労働基準監督署への通報も増えており、しっかり有給を与えるように指導が随時行われていますので、きちんと申請するなら多くの場合は有給を消化することができます。ただし、事業活動の妨げにならないよう、また周囲に余計な負担をかけないよう賢く計画的に申請することが大切です。

有休は基本的にある程度の期間働いてこそもらえる権利です。その期間中にはしっかり働き、そして周囲と助け合ってもちつもたれつの関係を作ってこそ、遠慮なく有給を取得できます。普段の勤務態度や周囲とのコミュニケーションを良好に作っておきましょう。

パートとアルバイトに違いはあるか?