テレビ局のADの仕事はキツイ!正しく知ってから志望しよう

テレビ局のADといえば、常に学生たちからも人気のある職種ですが、華やかなイメージとは裏腹にその仕事内容は地味できついハードワークになります。イメージだけでなく、しっかり仕事内容などを理解した上で志望することが大切です。

テレビ局のADの仕事はキツイ!正しく知ってから志望しよう

テレビ局のADたちはテレビ番組には欠かせない

テレビ番組を見ている中で、「AD」という言葉を耳にすることは多いでしょう。ADは「アシスタントディレクター」の略で、出演者側ではなく番組製作側のポジションですが、バラエティ番組などでは画面に登場することも多くなってきており、親近感のあるポジションになりつつあります。

TVスタジオ

このテレビ局のADはテレビ番組を作る上で欠かせない役割なのですが、その仕事内容についてきちんと理解している人はそれほど多くありません。テレビ局のADになりたいと考えている人は、ADたちがどのような仕事をしているのかしっかり理解しておきましょう。

テレビ局の番組制作にかかわるポジションとその役割分担

テレビ局のADについて知るためには、番組制作におけるポジションについて理解をしておく必要があります。カメラマンやアナウンサーとも違う、番組制作に関わるポジションを正しく理解しておきましょう。

プロデューサーは偉い人

書類を差し出すプロデューサー

プロデューサーは、テレビ局での番組制作において企画を承認したり、予算や人員を確保したり、その番組のための様々なプロモーションや調整などを行う立場の人を言います。経験を積んだディレクターなどが行うケースが多いです。

ディレクターは映画で言えば映画監督

ディレクターは英語では「director」と書き、「指導者、監督、取締役」などの意になります。テレビ局におけるディレクターとは、番組制作の現場主任を差し、映画で言えば映画監督の立場になります。番組スタッフを率いるチームリーダーとして、番組の中身を作り、実際に演出を手掛け、編集なども行う立場となります。

ADはディレクターの補助的な仕事をする

カメラマンの背後に立つAD

ADは「アシスタント・ディレクター」の略となりますので、基本的にはディレクターの補助の役割をします。時には「助監督」と呼ばれることもありますが、役割上の呼称であり、特に偉い立場ということはほとんどありません。仕事の大半はディレクターの手が回らない部分の補助であり、ひとつの撮影現場で複数のADが動き回るのが普通です。番組制作のために、コアな部分ではないとしても多くの部分で動き回りますので、番組が出来上がり、エンドロールに自分の名前が載ったのを見ると大きなやりがいを感じられます。

テレビ局のADたちがやっている主な仕事内容

テレビ番組を制作するためにあちらこちらへと動き回るテレビ局のADの仕事内容にはどのようなものがあるか確認しましょう。

番組制作の核になるリサーチとロケハン

カメラで撮影

テレビ番組は企画が決まればすぐに撮影ができる、というものではありません。視聴者にとって本当に面白いと思えるようなものなのか、また内容が事実と相違ないかを確認するのもADの仕事です。事前にネットや書籍などで情報収集を行うのが「リサーチ」で、撮影前に実際に現地でリサーチした内容や印象、撮影可否や撮影可能な場所などを確認する作業が「ロケハン(ロケーション・ハンティング)」になります。

事務作業や備品管理も仕事のうち

テレビ局のADは撮影現場で働くのが仕事だと思っている人も多いですが、実際にはデスクワークが非常に多い職種です。リサーチした結果を報告書にまとめたり、また会議用の企画書の作成を行ったり、撮影のために必要な小道具などの手配、ロケの際のスタッフたちの弁当手配や宿泊手配、取引先とのやり取りなどもADの仕事となります。ロケに必要となる機材や地図など、その時その時に必要になる備品の管理などもADが担当します。

撮影現場でカチンコやカンペを持ってディレクターをアシストする

カチンコ

撮影現場では、ディレクターは基本的に撮影を取り仕切り、動かしていく必要がありますので他のことはできません。撮影を効率よく進めるためには、ディレクターのアシスタントであるADが気を利かせて動き回る必要があります。具体的には、カチンコやカンペを持って動いたり、出演者に進行具合を伝えて準備を促したり、立ち位置などをバミったり(印をつける)、スタッフたちが働きやすいように食事や様々な調整などをして回ります。

誤字や脱字をチェックする編集作業

テレビ番組の制作では、撮影現場で収録した映像を全て使うことは基本的にありません。撮影した映像をつなぎ合わせて、番組として時間の枠内に収まるようにし、演出用にテロップやBGM、効果音などをつけていきます。基本的にはディレクターの仕事ですが、ディレクターが作ったものの誤字や脱字などをチェックしたりするのが主な仕事ですが、簡単な作業ならADに依頼されることもありますし、気の利いた提案があれば採用されることもあります。編集作業は、ADにとってはディレクターの技術を盗む勉強の場でもあります。

テレビ局のADにとって大切なこと

テレビ局のADは非常に激務になりますので、誰でもできる、続けられるわけではありません。テレビ局のADを目指す上で大切なことを挙げますので参考にしてください。

一番大切なのはテレビが好きという気持ち

テレビ番組を制作する仕事であるADですが、その仕事は華やかなイメージとは裏腹に、非常に地味なものが多いです。最初のうちは、テレビ番組を作っているというよりも雑用をしている感じを強く受けるかもしれません。テレビが好きで、その番組作りに携わっている、学んでいることに喜びを感じられることが一番大切な資質です。休日があっても、テレビを見ながら番組制作について勉強するというくらいにテレビに情熱を持っている人でないと務まりません。

仕事量が多いので心身ともタフであること

机に伏せて仮眠をとる男性

テレビ局の番組制作に携わるADは、複数の現場の仕事を同時にこなす必要もあるため、その仕事量は非常に多くなります。しばらく休日もなくなったり、食事も満足にできない時も少なくありません。

番組の撮影現場は深夜まで撮影が続いたり、進行が遅れればピリピリムードになることも多く、大物のスタッフや出演者などからお叱りを受けることもあります。職人気質・体育会系の気質と言われる撮影現場では、頑張っても、自分の責任ではなくとも、叱られたり当たられたりすることも多いのです。

また、ディレクターからの指示や呼び出しがあれば、昼夜を問わず常に動けるように準備をしておく必要があるなど、とにかく精神的にも肉体的にもかなりストレスがかかります。心身ともタフであり、また健康管理のために隙間時間を縫って食事や軽い運動、仮眠ができる自己管理能力も必要です。

撮影現場を盛り上げるコミュニケーション能力

テレビ局のADで最も大事な能力のひとつがコミュニケーション能力です。ADは、事務仕事などを多くこなす必要があることからビジネス的なコミュニケーション能力も必要となりますし、また撮影現場の雰囲気を盛り上げたり出演者・スタッフの気分を良くするためのコミュニケーション能力も求められます。

顔を覚えてもらい、業界内で顔が利いてくるようになると仕事もそれに比例して増えていくようになります。ADからどんどんステップアップしていく上でも、人との繋がりは非常に重要になります。たとえ自分の心身が大変な中でもコミュニケーションをおろそかにしない姿勢が求められます。

テレビ局のADはしっかりキャリアを考えておくことが大事

ADはスタートライン

ADはテレビ局で番組制作に関わる立場であり、いわゆる「業界人」のイメージがあることから、ADになりたいという人も少なくありません。キー局と言われるテレビ局のADでは基本的に四大卒くらいの学歴が必要となりますが、番組制作会社では専門学校の卒業生などもADとして受け入れていますし、アルバイトなどでADをしていた経験がある人なら比較的受け入れる土壌があります。

しかし、番組制作においてADは最初のステップです。給料も仕事内容から考えた時には良いとはなかなか言えない場合が多く、年齢が上がり、健康上も無理が利かなくなってくると続けることは難しくなっていきます。先が見えないことで辞めてしまう人も少なくありません。

テレビ局ではADは5年前後でディレクターに昇格していくことが多いですが、小さな番組制作会社では人の出入りが少ないために10年以上もADの立場におかれる場合もあります。

ディレクターになるにはADとして勉強し、実績も作り、また周囲の関係者にも認められる必要がありますし、その上でプロデューサーになったり、放送作家になるための道もあります。独立して番組制作会社を作る人もいます。いずれのキャリアを選んでいくとしても、AD以上の実力や周りへの影響力が無ければ務まらないので、そのための努力が必要不可欠です。

ADになりたいだけだと、その先の仕事で満足感が得られなかったり、またいつまでもADでいる間に健康を崩してしまって続けられなくなってしまいます。先のキャリアを考えてADの期間を過ごすことが大切です。

テレビ局のADの仕事をしていました体験談

テレビ局のADのしていたことがある2人に仕事内容を語ってもらいました。単にテレビの仕事が好きというだけでは続けられないことが分かります。

過酷な職種

けん(47歳)


デスクの前で目を閉じて疲れをとる男性

30歳のときに転職して制作会社へ入社しました。前職も映像系の仕事だったため、高をくくって選びました。案の定、最初の仕事はテレビのADでした。勤務時間も休日も不規則です。ただし、代休や時間外手当などの福利厚生はしっかりとありました。

具体的な仕事内容は、出演者の控室手配・お弁当手配・タクシーチケットの手配・現場小道具の確認・カメラのケーブルさばき・出演者への進行指示・飲み物や生理用品買出しなど不意な事態への対応、書いていたらキリがないほど多岐にわたります。

何でもかんでもADのせいにされてしまうので、大変でした。なにせ、現場での一番下っ端ですから。周りがみんな辞めていってしまう中、何とか頑張って続けていたら、いつのまにかディレクターになり、今ではプロデューサーになれたことが良かったことです。

一生の仕事にできるかどうか?

まるこ(32歳)


テレビADの仕事は、2年間続けていました。テレビ局のADの仕事を始めたきっかけは、就職先として放送局を考えていたからです。基本的な勤務時間は、11時から17時で、休日は、土日でした。

テレビADの仕事内容は、ディレクターの作業のサポート的なものから、その日の番組の出演者のアテンドや打ち合わせ資料の準備、スタジオのセットの準備や確認などです。

テレビADの仕事をしていて大変なことは、ルーティンワークがあまりなく、その日の番組内容や、ディレクターによって、やり方が違うことです。

テレビADの仕事をしていてよかったことは、放送局の裏側や番組がどのようにできるかを間近で見られたことです。一生の仕事に出来るかどうかを考える良い機会になりました。

テレビ局のADの仕事はよく考えて志望するべき

今はテレビ業界もネットに押され、縮小傾向にあります。番組制作の予算や人件費なども減り、ADなどの制作サイドの仕事はよりハードになっていて、現場では人手不足が深刻化しています。それゆえに憧れのテレビ局の仕事であるADにも就業しやすいのですが、実際に働き始めてみると想像以上の大変さに逃げ出してしまう人も多いです。

テレビ局のADの仕事は夢のある楽しい仕事でもありますが、華やかさだけではなく、様々な苦労も伴います。きちんと業務内容を理解した上で、先のキャリアもよく考えて志望することが大切です。