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「食べる」の敬語表現の正しい使い方・シーン別の参考例文

「食べる」の敬語表現は、ビジネスでの飲食の機会が増える社会人としてはしっかり身に着けておきたいものです。しかし、敬語のトラブルメイカーとされるほど間違いも多く見られるため、しっかり基本を理解しておく必要があります。食べるの正しい敬語表現を文例と共に紹介しています。

「食べる」の敬語表現は実は間違えやすい!

社会人にもなれば、食事の席を通して友人はもちろん、社内外の知人とのコミュニケーションを深める場面も多くなります。ビジネスの話を進めつつ行うランチは「パワーランチ」「ランチミーティング」などと言ったりしますが、こういった場面でも当然正しい日本語、敬語を使うことが必要となります。

特に「食べる」の敬語表現は使い分けが難しいため間違える方も少なくありません。しかし、飲食店に従事する方はもちろんのこと、そうではなくとも多くの場面で使用する言葉ですので、どんな状況の方でもしっかりその使い方を覚えておくべきです。

こんなにある「食べる」の敬語表現

「食べる」の敬語表現にはたくさんのバリエーションがあります。「召し上がる」「お食べになる」「頂戴する」「おあがりになる」「食べられる」「いただく」「食べます」など、これらは実際に使われている「食べる」の敬語表現です。

変換できる言葉が多いということは、それだけ大事な表現であるということですが、それぞれの意味を考えながら適切に使い分けることが大切です。特にマナーに対して意識の高い中高年の方と接する時には適切に使うようにしたいものです。

「食べる」の敬語表現の基本は「召し上がる」「いただく」「食べます」

食べるの敬語表現には様々ありますが、基本となるのは「召しあがる」「いただく」「食べます」の三つです。「召し上がる」は尊敬語、「いただく」は謙譲語、「食べます」は丁寧語になります。尊敬語については加えて「お食べになる」を覚えておくと使いわけがしやすく便利です。

尊敬語の「召しあがる」については、飲み物を飲む場合にも使える便利な敬語表現です。飲食の場面では何かと便利ですからぜひ覚えて使ってください。

敬語の種類

  • 尊敬語…目上の相手を高めることで敬意を示すもので、動作の主体は相手になります。
  • 謙譲語…自分がへりくだることで相手を高めて敬意を示すため、動作の主体は自分です。
  • 丁寧語…どちらの場合でも使え、特別に敬意を示す相手がいない場合でも使えます。

シーン別「食べる」の敬語表現とその例文

「食べる」の敬語表現がたくさんあることがわかったところで、シーンごとに異なる「食べる」の敬語表現を考えてみましょう。

目上の方に食事を勧める場合の「食べる」

最初の文のように「召しあがる」を使って表現するのが基本になります。「いただく」は謙譲語ですので、食べる主体が相手になる場合は使いません。
「こちらのソースをかけてからいただいてください」というように、テレビでリポーターや調理をされた方が話をする場合がありますが、これは間違った使い方ですので気を付けてください。

2つ目の文は「先輩も食べませんか?」でも良いのですが、やや雑に聞こえてしまいますので、「いかがですか?」で代用した方が丁寧に聞こえます。普段の「食べる」ではこの用法はなく、特殊な用法のひとつです。

目上の方から食事を勧められた場合の「食べる」

最初の文での「おあがりください」は「食べてください」の意味の表現です。相手に敬意を表する表現ではありますが、あまり目上の人相手に使われることはありません。目上だとしても比較的親しい関係の中で使われることが多い表現です。

また2つ目の分の「頂戴いたします」は、基本的に食事を勧められた場合の回答で使います。「こちらの天ぷらを頂戴いたします」のように自発的に使うことはほとんどありません。もちろん、この場合の「頂戴します」は「いただきます」でも問題ありません。

上司などの食事について表現するときの「食べる」

「召し上がる」は伺ったり勧めたりする場面で多く使われ、普通に表現する場合には「お食べになる」が多く使われます。決まっているということではありませんが、使われる場面を考えるとこちらの方が自然に聞こえます。

「食べられる」は敬語の表現として正しいのですが、受身などに解釈することもできるので、使用する際には食事を想起させるような内容が一緒にあると良いでしょう。

自分の「食べる」行為について表現するときの「食べる」

基本的には謙譲語の「いただく」または丁寧語の「食べます」を使用しますが、「いただく」の使い方には少々注意が必要です。

ひとつ目の例では、「キヨスクで簡単にパンを買っていただきました」と言うと、誰かに「買ってもらった」と誤解される場合があります。「いただく」にはどうしても「もらう」というニュアンスがありますので、簡単に食事を済ませたような場合には似つかわしくない場合があります。

「食べる」の二重敬語でありがちなパターン

「食べる」の敬語表現には「食べられる」というものもありますが、これは受身にも解釈できますし、また可能にも受け取ることができます。現在は尊敬の意で使われることはほとんどなくなっていますので、「部長、あちらの新しいお店の新メニューは食べられましたか?」というような使い方は誤解を招きかねませんので避けるのが無難でしょう。

また、「こちらをお召し上がりになってください」「温かいうちにお召し上がりください」という表現も良く使われていますが実は間違いです。正しくは「こちらを召し上がってください」「温かいうちに召し上がりください」が正解です。「お(ご)~」という表現も敬語の表現になりますが、それに加えて尊敬語を入れる二重敬語と呼ばれる間違いになります。

「部長、あちらの新しいお店の新メニューはお食べになられましたか?」も同様に「お食べになる」に尊敬の助動詞「られ」がつくために二重敬語となります。

二重敬語も徐々に受け入れられる雰囲気はありますが、正しい使い方ではありません。気にする方も多いため、日頃から注意すべきでしょう。

「食べる」の敬語は、ら抜き言葉の「食べれる」に注意!

よく指摘される間違いに「食べれる」というものがあります。この「食べれる」はいわゆる「ら抜き言葉」と呼ばれるもので、本来は「食べられる」が正解です。

ただ、発音上「R」が続いて言いにくいために、頭でわかっていても「食べれる」と言ってしまうことが多く、特に若い人ではよく使われているために、間違いだと認識している人は多くありません。

こうした表現を擁護する声も増えていますが、やはり気になる人は気になるもの。相手がもし目上の方やクライアントなどビジネスにおける重要な人で、その人からの印象を落としてしまうのであれば残念です。普段から間違えにくい「召しあがる」「お食べになる」を使用する習慣をつけておくと良いでしょう。

「れる」「られる」は様々な動詞をすぐに尊敬語にできるので大変便利ですが、安易に使うとミスも増え、また意味が正しく伝わらないこともありますので気を付けてください。

「食べる」の敬語は行動と一致させることも大切

敬語における正しい言葉遣い、表現は大事なことですが、どんなに正しく美しい言葉を使ったとしても、行動が一致しなければ空しいものです。

たとえば、上司や先輩と食事に行く際にご馳走になる場面もありますが、その際には「本日は美味しいお食事をご馳走様でした。大変ためになるお話も伺えて、とても有意義な時間となりました」など、最後に必ずお礼を言うことは基本中の基本です。

また、最初からご馳走してもらえることがわかっている席では、できるだけ残さず、きれいに食べることも最低限のマナーです。

「いただきます」「ご馳走様でした」というような表現は敬語というよりは挨拶ですが、食べる際のマナーとしてしっかり意識しましょう。

「食べる」の敬語が理解できれば上司や先輩との食事も怖くない

「食べる」の敬語表現は二重敬語や「ら抜き」言葉など、様々な面で難しいところはありますが、基本の表現を使うようにすると失敗は少なくなります。「召しあがる」「いただく」「食べます」が出てくるようになれば、さほど困る場面はありません。

上司や先輩と食事に行くのは、言葉遣いに気を遣っているうちはなかなか気が重いものです。ただ、こうした席は親睦を深めると共に、社会人として様々な学びを得る時間にもなります。

正しく日本語が使えるようになると、よりコミュニケーションに意識を割けますので、苦手意識も払拭でき、良い時間と感じられることが増えるでしょう。ぜひ基本を押さえて、上司や先輩との食事の時間を価値ある時間として活用してください。