退職するなら健康保険の切り替え手続きを忘れずに!

退職する時、健康保険はどうなるのか、健康保険の仕組みの説明から、退職後の対応についてどのような選択肢があるのかまとめました。健康保険の手続きの不備によって未加入の期間が発生してしまわないように、退職後の健康保険の手続きの仕方を覚えておきましょう。

退職するなら健康保険の切り替え手続きを忘れずに!

退職後の健康保険の手続きの仕方を教えます!

会社に在籍している時は、健康保険の手続きは会社がやってくれますが、退職後はそうはいきません。場合によっては諸々の手続きを自分で行う必要があります。健康保険は医療費の負担に直接関わってきますし、手続きできる期間に限りがありますので、いざ手続きをしなければならなくなった時に慌てなくても済むようにしておくと安心です。

退職後に手続きを忘れてはいけない健康保険とは

健康保険は、病気や怪我をした時に備えるための公的な医療保険制度です。病院にかかった時の医療費の負担はもちろん、病気や怪我で長期間働けなくなった時や出産した時などに保険給付が受けられるという制度です。

健康保険は加入している本人だけでなく、扶養している家族も同じように保険給付を受けることができます。健康保険には大きく分けて社会保険と国民健康保険の2つがあります。それぞれの特徴も押さえておきましょう。

社会保険

社会保険は、民間企業などの会社員や公務員、及びその家族が加入する保険です。全国的に運営しているのは協会けんぽという団体ですが、一部の会社や団体が組合を立ち上げて健康保険を運営している場合もあります。保険料は従業員と会社が半分ずつ負担します。

国民健康保険

国民健康保険は、会社員や公務員以外の人が加入するもので、一般的には自営業の人や、会社を退職した人などが加入することが多い保険です。運営しているのは各市区町村で、地区によって納める保険料が異なります。

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会社を退職する時は、その会社で加入している社会保険からは脱退することになります。退職後にすぐ別の会社に転職をしない場合、国民健康保険に加入するか、現在の社会保険を任意継続するか、家族の扶養に入るか、この3つのうちのいずれかの手続きをする必要があります。

退職後の国民健康保険への切り替え手続きを覚えよう

退職後に任意継続をせず、扶養にも入らない場合は、国民健康保険に加入することになります。国民健康保険は、加入に必要な資格はありません。必要な書類を用意し、期限までに手続きをすれば良いのです。

国民健康保険を手続きする場所は市区町村の役所

国民健康保険は、現在住んでいる市区町村の役所で手続きをします。国民健康保険の手続きをする窓口がありますので、市区町村のホームページなどで確認しておきましょう。

国民健康保険を手続きする期限は退職から14日以内

国民健康保険を手続するには、退職日の翌日から14日以内に行う必要があります。もし、手続きに必要な書類が揃わなかったなど、14日を過ぎてしまっても手続き自体はできますので安心してください。ただ、未加入の期間があると医療機関にかかった時の費用負担で困ったことになる可能性がありますので、できる限り期限内に手続きを済ませるようにしましょう。

国民健康保険の手続きに必要なものは退職を証明する書類

国民健康保険の手続きに必要なもの

国民健康保険を手続するためには、身分証明書、印鑑、それから退職日が確認できる書類が必要です。退職日の確認書類は離職票や健康保険の資格喪失連絡票など、退職日がわかるものであればどんな書類でも構いません。

退職後に健康保険を任意継続するには

健康保険の任意継続とは、退職後も在籍していた会社の健康保険に継続して加入できる制度のことです。一般的には会社を辞める時は、その会社で加入していた健康保険は脱退しなければなりませんが、条件を満たせば退職後も一定期間は加入継続することができるのです。

健康保険を任意継続するための条件は、被保険者期間が継続して2ヶ月以上あることと、退職日の翌日から20日以内に手続きをすること、の2つです。任意継続すると、その後2年間は退職した会社の健康保険に加入することができます。

健康保険を任意継続するには

ただし、健康保険を任意継続する場合、保険料を全額負担しなければなりません。会社に在籍している時は、保険料は会社が半額負担してくれていましたが、任意継続後は全額自己負担です。支払う保険料が退職前と比べて高くなりますので注意しましょう。

退職後に健康保険を任意継続する手続きの方法

健康保険を任意継続するには、まず手続きに必要な書類を用意します。健康保険を任意継続するために必要な書類は、任意継続被保険者資格取得申出書です。これは、加入していた健康保険組合のホームページなどでダウンロードすることができます。扶養家族がいる場合は扶養の事実を証明できる書類も必要ですので用意しておきましょう。

書類の準備ができたら、退職日の翌日から20日以内に加入していた保険組合に書類を郵送します。必ず窓口に行って直接書類を提出する必要はありません。

手続きが完了すると、新しい保険証と保険料の納付書が届きます。保険料は自分で支払う必要がありますので、納付書に記載されている期日までに支払いましょう。コンビニや銀行で納付することもできますし、口座振替にすることもできます。半年分か1年分をまとめて納付することも可能です。

任意継続は1日でも保険料を滞納してしまうと即脱退となってしまいますので気を付けてください。できれば、口座振替やまとめて納付にしておく方が安心です。

国民健康保険への切り替えと任意継続、どちらが得?

どちらが得か両天秤にかける女性

健康保険は、前年の収入や扶養家族の有無により支払う保険料が変動するため、どちらが得か一概には言えないのですが、一般的には国民健康保険へ加入するよりも、任意継続をした方が支払う保険料としては得をするケースが多いと言えます。国民健康保険の保険料は地区町村によって異なりますので、気になる人は問い合わせて確認してみるのがいいでしょう。

会社都合で退職した場合、健康保険はどうなるの?

会社の倒産や会社都合などやむを得ない理由で退職した場合、国民健康保険の保険料が減額されます。最寄りの市区町村の役所で手続きできますので、会社都合で退職した場合は忘れずに申請するようにしましょう。

手続きをする時は、退職理由を証明できる書類があるとスムーズに申請できますので、離職票を持っていくといいでしょう。離職票は、失業保険の手続きをする時に役所に提出しなければなりませんので、その前に健康保険の手続きをしておくのがベストです。

定年退職した時の健康保険の手続きはどうしたらいい?

定年退職後も、何らかの形で健康保険に加入する必要があります。再就職をしない場合は、国民健康保険への切り替え、現在の会社の健康保険を任意継続、もしくは家族の扶養に入るか、主にこの3つのうちのどれかを選択することになります。いずれの場合も、手続きができる期限が限られていますので、退職後に速やかに手続きできるように準備しておくのがいいでしょう。

退職後に家族の被扶養者になる健康保険の切り替え手続き

家族の誰かが健康保険に加入している場合は、条件を満たせば扶養家族となることができます。扶養に入ると保険料を支払うことなく健康保険の適用を受けることができますので、状況的に扶養に入れるのであれば、被扶養者になるのが経済的には最もメリットがあります。

扶養とは?

扶養とは、一般的には「助け養う」「生活の面倒を見る」といった意味があります。つまり、扶養者とは、家族を養っている人のことを言い、被扶養者とは、扶養者に養われて生活している人のことを言います。

扶養には、所得税など税金の控除に関係する「税制上の扶養」と、国民年金や健康保険などに関係する「社会保険上の扶養」がありますが、この2つは全くの別物と捉えるのがいいでしょう。健康保険の扶養については、「社会保険上の扶養」の条件で考えます。

健康保険で被扶養者となるメリット・デメリット

誰かの被扶養者になると保険料を支払う必要がありません。また、被扶養者が増えたからといって扶養者の負担する保険料が増額されることもありません。被扶養者まで健康保険が適用され、かつ世帯として支払う保険料が変わらないというのは、保険料の支払い負担を考えると大きなメリットと言えるでしょう。

被扶養者になるためにはいくつかの条件を満たす必要があります。具体的な適用条件は以下の通りです。

  • 生計を維持されていること
  • 扶養者の配偶者、直径親族、また子、孫、弟妹であること
  • 上記以外の3親等以内の親族で同居している人
  • 内縁関係の父母及び子で同居している人
  • 年間収入130万円未満であること(60歳以上または障碍者の場合は180万円未満)

パートで働く女性

特に年間収入が130万円未満であるという条件はデメリットになりえます。なぜなら、被扶養者も働いて収入を得ようとしている場合は、年間で130万円に収まるように働く日数や時間を制限する必要があるからです。

年間の労働時間を計算して、130万円を超えないように調整するのは面倒でもありますし、場合によっては年度末の忙しい時期に働きたくても働けないということが起こり、会社に迷惑をかけてしまうこともあります。世帯としてより多くの収入が必要な場合は、扶養には入らない方がいい場合もあります。

被扶養者になるための健康保険の手続きの仕方

退職後に誰かの健康保険の被扶養者になるためには、退職日の翌日から5日以内に扶養者を通じて扶養者の在籍している会社に書類を提出します。必要な書類は、収入要件確認のための書類、続柄確認のための書類、同居確認のための書類などが必要です。提出までの期限が短く速やかに手続きをする必要がありますので、書類は退職前から準備しておくといいでしょう。

退職後の健康保険の保険料はどうなるの?

会社に在籍している時の保険料は、会社が保険料の半額を負担してくれていますが、退職後に国民健康保険に加入する場合や、任意継続する場合は全額自己負担になります。この場合は、退職後に支払う保険料は、基本的には会社に在籍した時と比べて高くなると思っておいた方がいいでしょう。別の会社に転職する場合は、同じように会社が半額負担しますので、支払う保険料が大きく変わることはありません。

退職時の健康保険に関するQ&A

退職後の健康保険については、まだまだ疑問がたくさんあります。退職後の健康保険について、よくある質問をまとめました。

退職後すぐに転職が決まっている場合は健康保険の手続きをしなくていいの?

退職後に転職が決まっている場合は、健康保険の切り替え手続きを会社がやってくれますので、自分で手続きをする必要はありません。

退職する時、現在の会社の健康保険はいつまで使えるの?

現在の健康保険は退職日当日まで適用されます。例えば、退職日までの有給消化期間に病気や怪我をしてしまった場合でも、現在の会社の保険証を使って診察を受けることができます。

退職時に健康保険証を紛失してしまった場合どうすればいいの?

退職時に健康保険証を紛失したことに気づいたら、会社に紛失してしまったことを報告し、被保険者資格の喪失(滅失)届を提出します。退職が決まっている場合は、健康保険証を再交付する必要はありませんので、資格喪失の届出をするだけで大丈夫です。

健康保険証は退職時に返却しないといけないの?

健康保険証は退職時に返却?

健康保険の加入期間は退職日までですから、退職日を過ぎたら速やかに返却しなければなりません。保険証を返却しないと退職後の健康保険の脱退手続きに遅れが生じる可能性がありますので、退職日の翌日に忘れずに会社に返却する手配をするようにしましょう。

退職後に健康保険の切り替え手続きをしないとどうなるの?

健康保険は加入していない空白の期間があると、医療機関にかかった時の保険がきかなくなりますので、診療にかかった料金を全額自己負担しなければならなくなります。未払い期間の保険料を全て支払わない限り、ずっと全額自己負担で医療費を支払わなければなりません。退職後に面倒だからと切り替え手続きをせずに放っておくと、とても困ったことになりますので、退職後には忘れずに健康保険の切り替え手続きをするようにしましょう。

退職後はすみやかに健康保険の切り替え手続きをしよう

健康保険は医療費の支払いに直結しますので、手続きの不備によって未加入の期間が発生しないようにすることが大事です。「自分は健康だから保険は必要ない」といった安易な考えで手続きを怠るのは絶対にやめましょう。

退職後は収入が不安定になることも考えらえますし、何かと健康保険を利用する機会が増える可能性があるものです。健康保険は不測の事態に備えるためのものですから、しっかり手続きをして、いざという時に困らないようにしておきましょう。