退職したあとの確定拠出年金の手続きの仕方

確定拠出年金制度を導入する企業が年々増加し、この機会に仕組みをちゃんと知りたいという人もいるでしょう。確定拠出年金とはどんな制度か個人型と企業型の違い、中途退職時に絶対必要となるいかん手続の必要性と方法、脱退できるのかをご案内。

退職したあとの確定拠出年金の手続きの仕方

退職したら確定拠出年金をどうすればいい?

退職金や年金制度の見直しに伴い、確定拠出年金制度を導入する企業は年々増加し続けています。平成29年6月時点での導入企業は2万7千社以上、加入者数も620万人を超えています。ただ、自分が在籍している会社は確定拠出年金制度を導入しているけど、仕組みはよく知らない…。そんな人も多いのではないでしょうか。

では、転職や独立、結婚して専業主婦になるなど、確定拠出年金制度を導入している会社を辞めなければならない時には、一体どうすればいいのでしょうか。今回はその手続き方法についてご紹介します。

確定拠出年金にはどんなものがある?

考え事をしているサラリーマン

確定拠出年金とは、毎月決まった額の掛金を自分の口座に積み立てして自分で運用していくものです。投資をする商品の選択など、運用の仕方によって将来得られる給付金が変わるもので、「個人型」と「企業型」の2種類があります。
原則として給付金を受け取れるのは60歳からである事や、積立て時には所得税や住民税の控除対象となる等、共通する部分もありますが「個人型」と「企業型」の違いをまずは簡単に押さえておきましょう。

個人型確定拠出年金(iDeCo)

  • 老後の備えなど自分で積み立てる年金として、個人が任意で加入するものです。
  • 掛金を自分で設定し、自己負担で拠出します。(掛金には上限があります)
  • 金融機関や運用商品も自分で選択します。(運用商品は金融機関によって異なります)

企業型確定拠出年金

  • 基本的に企業の退職金制度として導入されており、在籍する従業員が加入します。
  • 掛金は企業が負担します。(従業員が一部負担するケースもあります)
  • 運用商品の選択は従業員が行います。(金融機関の選定は企業が行います)

確定拠出年金制度と退職金制度はここが違う

勤続年数に応じた額を退職後の生活保障として支給するという点では共通していますが、確定拠出年金と退職金はそれぞれ支給の仕組みが異なります。

まず、退職金の場合は積み立てた掛金の運用も会社が行いますが、確定拠出年金は掛金の運用を従業員が自分で決めて行います。つまり、自分の運用方法によってもらえる額が変わるという事です。退職金の場合は、会社ごとにルールは異なるものの、基本的に支給額は勤続年数に応じて一律で決まります。

確定拠出年金は会社の外で掛金の積立てをするので、仮に会社の業績が悪化してしまった場合や、倒産してしまった時でも、基本的に積立金は保障されます。退職金の場合は、会社が運用の仕方を決めるので、業績の変化等により支給額が目減りする可能性があります。

さらに最も大きく異なる点は、確定拠出年金は中途退職した場合、次の転職先に持ち越せるという事です。退職金は、60歳の定年退職でなくても勤続年数に応じた額の退職金がもらえますが、確定拠出年金は老後の生活保障の為にお金を積み立てる事を目的とした制度のため、60歳になるまでは会社が変わったとしても運用を継続していきます。

会社の業績は、景気の情勢などにより刻々と変化します。先に述べたように、退職金制度では景気が著しく悪くなった時などには充分な保障を社員に提供できなくなる事もありえます。確定拠出年金制度を導入する企業が増加しているのは、こうした状況に対応する為でもあります。

退職後に確定拠出年金を放置したらどうなるの?

円マークの上で考え込むサラリーマンの人形

退職時の確定拠出年金の手続きは基本的に自分で行わなければなりません。手続きが面倒なので、ついつい放置してしまいがちですが、退職後に何も手続きをせずにそのままにしておくと、積み立てた掛金は「国民年金基金連合会」という機関に自動的に移管されてしまいます。これはいわゆる「塩漬け」と呼ばれる状態で、このままでは何ひとつ得する事がありません。
確定拠出年金は60歳から給付金を受け取れますが、給付金を受けるためには10年以上の加入期間が必要となり、自動移管されている間は加入期間には含まれません。つまり塩漬けの状態が続けば続くほど、給付金を受け取れる時期が遅くなってしまう、最悪の場合は給付を受けられない可能性もあります。

また、自動移管されている間はもちろん積立金に利息もつきませんし、逆に毎月51円の管理手数料がかかります。何もしないで放っておくと、どんどん積み立てたお金が目減りしてしまいます。そのため、確定拠出年金制度のある会社を退職する時には、面倒くさがって放置せず、きちんと手続きをするようにしましょう。

確定拠出年金は退職したら6ヶ月以内に手続きをする

自動移管されないようにするためには、退職後6ヶ月以内に手続きをする必要があります。退職後の進路によって手続きの方法が変わりますので、それぞれどのような手続きをする必要があるのか、しっかり押さえておきましょう。

退職後、企業型確定拠出年金制度がある会社にすぐ転職するなら加入する

書類を見ながら電話で手続きをする会社員の女性

転職先の会社にも確定拠出年金制度がある場合は、基本的にはその会社の確定拠出年金制度に加入します。前の会社からの移管も含めて手続きは会社がやってくれますので、基本的に自分で手続きをする事はありません。ただ、前の会社でも確定拠出年金制度に加入していた事は必ず申告する必要があります。

会社によって選択している運用機関が異なりますので、運用商品を選択し直す可能性はありますが、転職する前とほぼ変わらない形で運用を継続することができます。会社の業績によって今までの積立額が目減りするといったこともありませんし、会社から運用に関するアドバイスを受ける事もできます。こういった点は企業型確定拠出年金に加入する大きなメリットだと言えます。

企業型確定拠出年金制度に加入できない場合は個人型拠出年金制度に加入する

パソコンのモニタを見る起業家

導入企業が増えてきたといっても、企業型確定拠出年金制度がない会社に転職する可能性は大いにありえます。また、退職後に独立を考えている人や、すでに述べた自動移管のタイムリミットである6ヶ月以内に転職しない予定という人だっているでしょう。

こういったケースのように、企業型確定拠出年金制度に継続して加入することができない場合は、個人型確定拠出年金に加入することになります。確定拠出年金は、基本的には一度加入したら途中で辞めるものではなく、60歳まで継続運用するものだということです。

個人型確定拠出年金に加入する時には、全て自分で手続きをしなければなりませんが、まず下記の2つを決める必要があります。

  • 運用機関を選ぶ。
  • 「加入者」になるか「運用指図者」になるかを決める。

運用期間の選択は、金融機関によって扱っている商品や、口座の管理手数料などが異なりますので、自分に合ったものを選びましょう。
「加入者」はこれまで通り掛金を積み立てながら運用管理をしたい時。「運用指図者」は掛金の積み立ては行わず、現状の積立額の中で運用をしたい時に選びます。例えば、退職後に専業主婦になり収入がなくなるので掛金を毎月拠出するのが厳しい、といった人のために「運用指図者」という選択肢があるのです。

手続きをする際には、加入申出をした運用機関から必要な書類として、個人型年金加入申出書と個人別管理資産移管依頼書、口座振替依頼書などが送付されますので、必要事項を記入して提出します。また、転職先の会社が記入した証明書が必要な場合もありますので気を付けましょう。もちろん本人確認書類も必須ですのでお忘れなく。

個人型確定拠出年金は自分で掛金を出して資産を積み立てるものですが、普通の銀行預金のようにいつでも好きなように引き出せるものではありません。ですから、60歳になってからの老後の生活を保証するものだと考えるのが良いでしょう。そう考えれば、確定拠出年金を運用して老後の資産を増やす事は、長い目で見れば大きなメリットになります。また、確定拠出年金は税控除の対象になりますので、所得税を払っている場合は税負担が軽くなるという利点もあります。

退職をきっかけに確定拠出年金制度は脱退することもできる

?マークと考える男

継続しようとすると色々手続きが面倒だし、退職金のように会社を退職した時に今までの積立額をもらっておきたいので、退職するタイミングで脱退したいと考える人もいます。実際に途中で脱退する事はできるのでしょうか?

結論から言うと、脱退する事は可能ですが、そのためにはかなり厳しい条件を満たす必要があります。確定拠出年金は文字通り年金ですので、基本的には60歳まで受け取れない事を前提としているからです。

確定拠出年金制度を脱退するための条件は?

脱退する場合には、確定拠出年金法で定める要件を満たす必要があります。加入者資格を喪失した時期などによって要件が異なるため、とても複雑なのですが、これから退職や転職をする方に当てはまる「平成29年1月1日以降に加入者資格を喪失する場合」に絞って脱退するための要件を簡単にまとめると、以下の通りになります。

  1. 企業型、個人型のいずれにも加入しておらず、積立金額が1.5万円以下である場合
    積立金額が極めて少額である場合です。加入資格喪失後(退職してから)6ヶ月以内である必要があります。
  2. 通算積立期間が1ヶ月以上3年以下で、積立金額が25万円以下である場合
    国民年金第一号被保険者のうち、保険料免除か納付猶予を受けており、障害給付金を受給していない事、加入者資格喪失から2年経過していない事が必要です。

上記の1.もしくは2.のいずれかの条件を全て満たす時には、脱退一時金を受け取る事ができます。
平成28年12月以前に加入資格を喪失した場合でも同様に複数の脱退要件がありますので、当てはまる人は運営管理機関に問い合わせしましょう。

退職後もうまく確定拠出年金を活用できれば資産が増やせる

確定拠出年金はとても複雑な制度ですが、うまく活用すれば将来の資産を増やすチャンスになり、働いている間は節税にもなります。今までは会社に任せっきりだったという人も、退職や転職する機会を通じて確定拠出年金への理解を深めてください。まずはしっかりと知ること。それが確定拠出年金制度を上手く活用する第一歩になるはずです。
自分の将来の安定に繋がる確定拠出年金。何もしないでそのままにしてしまうのは勿体ないですよ。