退職の引き止めでしつこい手法から上手く回避する断り方

退職の旨を伝えると会社側からあの手この手で引き止めをされるものです。これに構っていると新しい仕事にとりかかれず、また心理的にもストレスとなります。上手に回避してスムーズに退職するためにも、退職の引き止めにあったときの対処法をチェックしておきましょう。

退職の引き止めでしつこい手法から上手く回避する断り方

退職の際のしつこい引き止めはストレスになるもの

もしも自分が入社し、働いていた会社が合わなかったり、何かの問題があるために勤務を続けることが難しいなら、今の会社を退職して転職するのは当然の選択肢です。

しかし退職を希望するなら、多くのケースにおいて慰留(いりゅう)、つまり引き止めが行われることでしょう。

なければないで寂しいこの引き止めですが、実際行われてみると非常にストレスになり、うっとうしく感じてしまうもの。退職時に引き止めを上手にかわし、次のステージに進むために必要なことを押さえておくと、いざという時に役立つことでしょう。

しつこく引き止められないように退職までのフローを確認しておこう

退職願のイラストと企業ビル

法律上は退職願を出して2週間が経過していれば退職が可能です。原則は「退職の意思を伝え」「退職願をその証拠書類として提出する」ことで退職は可能となります。つまり、言葉だけの口約束による退職は法的な効力がありませんので、企業側に有利となることもあります。

退職までの一般的な流れ

  1. 身近な上司や先輩社員、人事などに退職の意向を伝える
  2. 退職時期などを相談した上で退職届を出す
  3. 退職までの期間に業務の引継ぎなどを行う
  4. 退職日に退職

引き止め工作のタイミングとしては退職の意向を伝えたタイミングが最も多いですが、業務の引継ぎ時も引き止めが発生しやすいタイミングとなります。

会社が退職の引き止めをしつこく行う理由

退職を希望することは労働者の権利ですので、会社には妥当と思われる理由がなければ基本的に拒否することができません。それでも会社が退職希望者を引き止めるのには会社側の事情があるためです。

1 退職後に残された人の業務負担が増えるため

当然、一人抜けてしまったからと言って会社として行う仕事量がすぐに変わることはありません。業務に穴が開いてしまったり他の従業員にしわ寄せが行くようになり、そのために職場の労働環境が悪化してしまいます。場合によっては離職者が雪だるま式に増える可能性もあるため、企業としても退職者が出ることは避けたいのです。

雪だるまを転がす男性と青ざめる会社員のイラスト

2 退職した人の穴埋めに新たに人を採用するコストがかかるため

今は特にどこも人材不足・人手不足となっているため、人材を新たに確保するためには相当のコストがかかります。また、採用してもその後、一人前の戦力として育てるための教育コストや時間のコストも発生しますので、そのコストをかけたくないこともあり、慰留を行います。

3 退職者の上司の責任回避のため

部下の管理は上司の責任であり、上司がいかに部下をマネージメントし、モチベーションを高く保てるかは組織にとって大事なことです。その一方で、退職者の有無が上司の評価につながる場合があったり、会社側から人材が流出するのは上司の管理責任とされる場合もあります。その際には上司は退職者の都合ではなく、上司の都合から引き止めを行うこともあります。人事部も同様です。

4 退職者が持っている技術・知識の流出防止のため

退職者が持っている技術や知識が外部の企業に流れることによって、自社の競争力が失われる場合があります。機密情報や技術などについては秘密を守るように別途誓約書を書くことが一般的ですが、本人の持っているものは完全にフタをすることができません。

試験管を持って実験する男性のイラストと白衣を着ている研究員

5 退職後のパワハラ・セクハラ訴訟防止のため

パワハラやセクハラがある企業や上司が、その事実が外部に漏れてしまいイメージが悪くなることを恐れたり、訴訟を起こされないようにと引き止めをする場合もあります。

退職する時の会社の引き止め工作の手法

職場で部下を褒めている上司

会社の引き止め工作は、法的な拘束力はありませんが、心理的にはどうしても拘束力が発生します。外部のコンサルタントや弁護士などに引き止めのための研修を受けている場合もありますので、しっかり決心しておかないと覚悟が揺らぐこともあります。

1 褒める

「君は会社にとって必要な人材だ」「君がいないとあのプロジェクトが進まない」「将来会社を担う人材と期待していたのに」など、能力や人格を褒めてプライドをくすぐることはひとつの常套手段となっています。

2 叱る

若い社員相手に行われることの多い方法が強い口調で退職希望者を責め立てること。「そんなすぐに投げ出して、他の会社で通用すると思っているのか!」「それは逃げじゃないのか?」「お前のことを思って言ってるんだ!」「他のメンバーやお客さん、プロジェクトはどうなる?」などと迫力で押してきます。

労働者側に少しでも後ろめたい思いがあると、精神的なストレスが大きくなり退職を思いとどまることもあります。脅迫めいていると感じた場合は、労働基準監督署など専門機関への相談も検討しましょう。

3 問題となっている待遇を改善すると提案する

待遇について問題視していることが退職理由であれば、それを改善するための提案を持ってくることもあります。具体的には配置転換や残業時間や手当の調整などを打診されます。
ただし、退職願を撤回させることが目的ですので、具体的な時期や実施についてははっきりしないケースも多いため、応じる場合にはくれぐれも注意が必要です。

4 退職時期を遅らせるように調整を提案する

引継ぎの終了や後任が決まるまで退職時期を遅らせるように調整を求められる場合もあります。退職者が次の就職先を決めていないとつい引き受けてしまいがちですが、そのままズルズルと残ってしまうケースも少なくありません。

退職の引き止めにあわないための作戦とは?

退職の引き止めにあわないためには、きっちり退職の計画を立てた上で進める必要があります。

上司に書類を提出するOL

1 退職日まで余裕を持って計画を立てる

会社側が引き止めをする理由の中には「急に辞められると困る」という心理が存在します。つまり、スムーズな円満退職のためには急に辞めないことが必要です。会社側に十分な時間として、できれば2~3か月前から上司などに退職を考えている旨を打診しておき、引継ぎなども計画的に進めていきましょう。

繁忙期を避けることも意識しておくとよいですし、無職になると住居を借りるのが難しくなりますので、社宅などで引っ越しが必要な場合は先に新しい住居の契約を進めておきましょう。

2 次の仕事を決めておく

ズルズルと退職日を伸ばされてしまうのは、新しい生活を始めたい人にとって良いことではありません。次の仕事を先に探しておき、入社日まで決定しているなら会社側も退職日を先延ばしすることが難しくなります。

3 退職を引き止めにくい理由を作っておく

会社の事情よりも優先して退職するべきと思われる理由を作っておきましょう。早めに知らせておくとさらに状況は有利になります。
待遇に関する問題なら会社でも対応することはできますが、「両親の介護」「結婚による転居」「次の仕事が決まっている」「留学や専門学校などの入学日が決まっている」などがあれば引き止められにくいでしょう。

引き止めに合っても社会人なら目指すべきは円満退社

その職場にいることに価値が見出せないために退職するわけですが、お世話になった同僚たちに負担をかけることにもなりますし、社会人生活の中でいつ退職する職場と接点ができるかもわかりません。悪い印象を残さずに円満退社を目指しましょう。

円満退社をするためには、よく周囲を話し合って、会社に負担をかけないように退職することが大切です。感情的な引き止めがある一方で、「次の場所でも頑張ってね」と言われるくらいが一番よい形での退職になります。

退職の引き止めがしつこい場合は最後の手段も覚えておこう

困った表情をしているサラリーマン

労働者が辞めたくても、何かと事情をつけて辞めさせてくれない場合もあります。万が一のための対応についても押さえておきましょう。

1 法に訴える

民法上は、退職届の提出から14日が経過したら退職が可能となっています。これは、相手が受理したかどうかによらず、提出の事実があれば退職できることになっています。マンガなどでは退職届を破って「これは無効だ」という人がいますが、提出した事実があれば無効にはなりません。
内容証明郵便などで確実に届けた形跡が残るようにしておけば、無理やり辞めることも可能です。

2 専門機関に相談する

退職について揉めてしまったり、脅迫などが行われた場合には、公共の労働相談窓口や労働基準監督署、労働組合などに相談してみると良いでしょう。法テラスなどを使って弁護士に相談してみるのもよいでしょう。

引き止めされないように退職は計画的に準備を進めよう

退職をするとなれば、企業の立場からすると引き止めは当然するべき行為です。しかし、労働者側の事情としては引き止め工作に構っていては、貴重な時間が奪われてしまいますし、何より新しくやっていこうとする気持ちが削がれてしまいます。

いたずらに時間を奪われないよう、退職の引き止めは計画的に回避しましょう。早めの相談と計画的な業務の引継ぎ、そして新しい生活や仕事の準備を進めて、タイミングを見てから退職願を出すようにしてください。気持ちよく退職できれば、その後も元上司や元同僚との良好な付き合いも期待でき、その後の社会人生活の貴重な財産となるでしょう。